子供の頃の絵

osamuharada2009-11-11

これはヤツガレが御幼少のミギリに、箱根でお絵描きをしたものであります。倉庫で探し物をしていたら、思いがけずこの古い画帳を見つけ出しました。箱根のあちこちをスケッチした中に、この絵がありました。これを描いた子供の頃が、実に懐かしく、さらに拙著『ぼくの美術帖』で、三十代の頃に、この絵について書いたことまでが、なんだか懐かしく思えてきました。「鈴木信太郎」の章での、拙文のはじめにこんなことを書いています。
鈴木信太郎の絵を、いつ頃から好きになったのか、あまり遠い昔で記憶がはっきりとしていません。/ただ憶えているのは、ぼくの十歳前後でしたが、体の弱い祖母がよく養生にいっていた、箱根の木賀の里という温泉の旅館で、そこの庭を描いたスケッチを見たことがありました。その時すでに鈴木信太郎の名を知っていて、ぼくはその絵と目の前の庭を同時に見ながら、パステルで画帳に、真似て描いた記憶があります。/それは岩場から滝が流れて、池に鯉が群れ、欄干のついた真赤な橋が架かり、手前の新緑の木々の間には大きな石燈籠がある中庭でした。庭もその旅館も、ぼくはとても好きでした。信太郎画伯もよくみえると聞かされて、ますます気に入りました。随分、ぼくは可愛げのない小生意気な子供だったに違いありません。】
確か新緑の季節に箱根に行ったはずでしたが、絵では紅葉が描かれています。つまりこの絵は壁に掛かっていた鈴木信太郎の絵の庭を、半分だけ真似して描いたのだと思われます。やっぱり生意気なガキでしたね。オフクロが絵に書いておいてくれた年号を見たら、九歳の時です。なんと半世紀以上も、昔むかしのことでありました。