シスレーの空

osamuharada2009-10-22

12月号の芸術新潮に、印象派の風景画家アルフレッド・シスレーについて何か書くつもりで、画集を眺めていた。  いつもコラムのテーマは、ぼくの好きな美術家をアトランダムに選んでいます。実は苦手な原稿を書くより、その下調べをしている時間が一番楽しいのです。 日本では馴染み少ないシスレーなので、関連書は一つもない。パリで買ってきた画集がいくつかあるだけ。以前、みすず書房版『ぼくの美術帖』の後書きにかえて、シスレーについて自分で書いたことはあります。
やはり「空の画家」とも言われただけあって、風景の画面半分近くをしめる、広大な青空や曇り空の絵が素晴らしい。四季を追って描く空にもいろいろある。画集をあれこれ見ていると、絵の中に入り込んで、しばらくは恍惚となる。 しかしあくまで画集なので、同じ絵でも、印刷の色が画集によっては違っていることに気がつく。オルセー美術館などで観た実物の絵の色彩は、当然ながら印刷では再現不可能なのだけれど、どの図版の色が絵に近いかは画集では結局わからない。何だかものたりなくなってきて、ふと窓の外に目をやると、夕方の空に秋の雲がかかって、まるでシスレー描く、イル・ド・フランスの空にソックリではありませんか。すぐにアトリエの庭に出てみては、しばしシスレーを想い、空と行雲を、絵の替りにノンビリと鑑賞したのでした。
このところ島では、昼は晴れていても、夕空に雲がかかり、夜半には曇ってくるので、三日間いまだオリオン座流星群を見ることあたわず。こっちは残念。 さてこれから、シスレーについての原稿書きを、ぼちぼち始めようかなァ。