缶コーヒーCMの変なオヤジ役で人気者?のトミー・リー・ジョーンズ。漫画の国ジャパンでは、当代の名優でさえ、ただのお笑いネタにしかならないとは、オールド映画ファンとしては情けない限り。なので、ワタシにもちょっと一言いわせてもらいたい。
二十一世紀に入り’01年9.11テロ以降は、アメリカ映画も混迷して、もう終わっちゃったんだなァ、とすっかり諦めていたのですが、’05年のトミー・リー・ジョーンズ監督主演の映画『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』を観て、目が醒まされました。テキサスとメキシコが舞台の、現代版ウェスタンですよ。七〇年代のアンチヒーローものの影響もあるでしょう、これぞ待望の、男の中の男映画、最高です! ただし日本の草食系兄ちゃんたちには理解不可能なはず。インディペンデント映画で、一般女性向きでもありませんが、映画好きな方には是非とも観て欲しい。 実はトミー・リー・ジョーンズという人は、プア・ホワイトの出ながら、奨学金を得てハーバード大学の文学部出身というインテリなのですよ。現在も故郷テキサスに住んでいて、牧場主でもあるそうで、崖っぷちを馬で渡るシーンもスタント無し。カウボーイ役が身についているわけです。このDVDのおまけにあるインタヴューを聞くと、アメリカの映画俳優の知的な奥深さに頭が下がります。映画に対する愛情も半端じゃないのです。比較すると、現代日本映画などを同じ「映画」と呼ぶ気さえしなくなる。
さらにトミー・リーの演技力が最高潮に達したと思わせるのが、’07年ポール・ハギス脚本監督、トミー・リー・ジョーンズ主演『告発のとき』です。ついこの間のイラク戦争がテーマ。まだまだアメリカでは、映画が(ごく一部だけど)新たに成長し続けているんだなと確信しました。同時に映画俳優たちもね。 古い話で申しわけないが、’77年のB級アクション映画『ローリング・サンダー』のベトナム帰還兵役のトミー・リー・ジョーンズを観て以来のファン(それに同い年だし)なので、立派な名優に成長したことが凄く嬉しいのです。おまけにこの映画の夫婦役で共演したスーザン・サランドン(この人も同い年で、昔からの大ファン)の演技力にも、言葉にならないほど感動。出演時間は全部合わせても10分くらいなのに、サランドンの名演技たるや、歩く後姿だけとっても役になりきっていて見事です。ここまで熟成された名優たちが次々と登場してくると、今後の大人のためのアメリカ映画に、さらなる期待をよせちゃうなァ。どうでもいいけど缶コーヒー日本では、この2本コケちゃったけどね。
つまらない豆知識→タランティーノの映画配給会社の名前が「ローリングサンダーズ・ピクチャーズ」となっているのは、くだんのB級映画『ローリング・サンダー』へのオマージュです。
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