古い仕事部屋

osamuharada2009-09-07

先日、あるイラスト業界誌の取材があって、この次は島のほうの仕事部屋を是非見せて欲しいという。専門誌によくある「プロの仕事場拝見」ネタですね。 残念ながら還暦過ぎてからは、一度も使っていないし、すでに物置小屋になっていますよ、とおことわりしました。  絵を描くためのアトリエの、庭のはずれの隅ッコに、イラスト専用の仕事部屋を設けたのは、四十代から五十代にかけての、ヤツガレもまだ働き盛りの頃。オサムグッズのキャラクターやデザインも、この小さな(6畳ほどの)小屋にコモって仕事していました。室内はコックピットのような感じで、狭いほうがいいのです。イラスト大量製造には便利で使いやすい工夫をあれこれ施して設計しました。黄色にコッてた頃だから、床はレモン色のリノリューム。すべてオリジナルの、大きなデスクに壁いっぱいの本棚や引き出しなど、室内はワレながら結構ハイセンスなつもりの仕事場なのでした。 男の働き盛りは、また大人の遊び盛りでもあったので、都会にいると気分が落ち着かない。東京の仕事場にいたら気が散って、つい外に出かけては人と会ったり遊んだり。イラスト稼業にはまったく精神集中ができなくなる。それに島へ行って趣味の絵のほうを描くヒマもない。仕方なく二つの理由で、島のアトリエにも、別にイラスト専用の仕事部屋をつくったというワケでした。かつてのバブル華やかかりし頃は多忙を極め、自由業に付きモノの入稿締め切りという苦難もあり、この小屋に三日三晩おこもりして、ほとんど寝ずに働いたという苦い経験何度かアリ。やっぱり体力的にも若かったんでしょう、もう二度とゴメンだぜ。 昨日撮った写真の奥にあるのが、その旧イラスト仕事部屋。現在は庭掃除道具や脚立など置く汚い物置です。アトリエの母屋からは20mほど離れているので、スペイン瓦に白い漆喰の小屋は、遠くから眺めている分には感じがいい。夜は室内に小さく明かりをともして、ちょっと大きめの石燈籠に見立てています。時々、かつてはあそこで過酷なイラスト稼業をよくまァやっていたもんだね、などとボンヤリ思い出しては苦笑しています。