黒田維理撰集 ナポリ フラッグ

osamuharada2009-08-29

モダニズムの詩人、黒田維理の初期と後期に書かれた、詩、短編、紀行文、評論の撰集、『ナポリ フラッグ』が上梓されました。詩集『Something Cool』以前の同人誌『青ガラス』や、『VOU』、『鋭角・黒・ボタン』から、後期の黒田維理、諏訪優編集による『Will』、その後の『TRAP』などに至る、いわば拾遺集のようなものだと思います。ぼくには懐かしくて、いつも新刊が出ると黒田さんが送ってくださった『Will』の中でも、ヴェネツィア紀行文「エズラ・パウンドの墓」や、《北園克衛をいかに読むべきか、をなるべくわかりやすく書きたいと思う。》という書き出しで始まる「HOW TO READ:KIT KAT」が再録されていたので嬉しいです。
上の写真右側は、ぼくの持っている1950年代の『青ガラス』、’80年代の『Will』です。真ん中の写真は、1958年刊の、同人誌『VOU』のアニュアルのような、アヴアンガルド詩集『鋭角・黒・ボタン』における、黒田維理の写真作品「白い午后」(これは今回の本には載っていません)です。 左頁は、師である北園克衛の写真「卵による造型」。他に、『Something Cool』の表紙写真を撮られた清水俊彦の写真も掲載されています。『VOU』の全盛期といった感じがします。
詩作品では、著者二十代の初期と五十代からの後期には、年齢的にも乖離があって当然ですが、その透明な明るさは終始変わっていないように思えます。まさにサムシングクールですね。その『Something Cool』には、「Conclusion」と題する短い詩がありましたが、後期にも同じ題の詩が書かれています。
          Conclusion
      かくも美しく 優しき時が この地の上に
      あったことが信じられましょうか
      ありふれた一組の男と女よ


黒田維理Something Cool (id:osamuharada:20070208)  北園克衛.com http://www.kitasonokatsue.com/  

ナポリフラッグ―黒田維理作品集

ナポリフラッグ―黒田維理作品集