坂倉準三の列柱デザイン

osamuharada2009-08-09

鎌倉に住む娘夫婦を訪ねるついでに、八幡さま境内の池に面した、神奈川県立近代美術館を久しぶりにのぞいてきました。日本で最初(1951年)にできたモダンアート専門の美術館。たまたま、この建物を設計した「建築家坂倉準三展」をやっている。建物自体も展示作品ということになるのでしょ。坂倉準三は、かのル・コルビュジエの直弟子だったので、さぞや美術館建設当時はモダン建築の最先端だったことでしょうね。さすがに半世紀過ぎると、ちょっと老朽化してくたびれちゃった感じ。一階の壁は大谷石を積んでいるので、どうしてもフランク・ロイド・ライト風に見えちゃうな。鉄骨とガラスでできた別棟の建物(こっちが好きなのに閉鎖中)は、ミース・ファン・デル・ローエのパクリにしか見えないよ、と今さらモンクいってもはじまらない。  この美術館は、土方定一(1904〜1980)が初代館長さんをされていた時代の、斬新な企画展がどれも素晴らしかった。戦後モダンアートの牙城だったのでは、と今にして思う。《 夏草や つはものどもが 夢の跡 》
白い花咲く蓮の池と、一階の大谷石の壁の間に、コンクリ打ちっ放しのベランダがある。池に突き出たところには、二階の建物を支える柱が六本並んでいる。断面がH形の、H鋼がむき出しの列柱になっていて、その柱を受ける礎石はそれぞれ形が異なる自然石です。水面に浮かんでいる小島ようで美しい。蓮池を渡る涼風がここちよくてウットリする。 目をこらしてよく見ると、自然石は真っぷたつに割られて、後でくっ付け合わせてある。H鋼は構造柱だから石の上に置いてあるのではなく、地中まで石を突き抜けているはずだ。つまり見た目は、いしずえとしての礎石だけれど、これは鉄と自然石を出合わせた、単なるデザインなのだと解かる。 既製品のH鋼をわざと使っているから、何となくミニマル・アートのような気もしてきて、一つずつじっくり鑑賞していると面白い。ドナルド・ジャッドを先取りしちゃってるもんね。
自然石が列柱の礎石になってるといえば、世界最古の木造建築 法隆寺の回廊列柱の礎石が、自然石なのですよ。(こっちは本物の礎石) これもぼくには、あの百済観音と同じく、法隆寺の謎の一つなのです。謎であると同時に、日本独自の素晴らしく美しいもの。 何故、中国建築そのままのような法隆寺に、人工的に削った石づくりではなく、日本の不定形のままの自然石を礎石に配したのか?すごく不思議です。 これってぼくには現代美術なんかよりもっと面白い、古代日本人の美意識のモンダイなのでありました。 百済観音の謎は→(id:osamuharada:20080706)