アブストラクトと床の間

osamuharada2009-07-21

部屋を自分で設計した時、真っ先に考えたことは、和室に川端実先生の抽象画をどう掛けるか?なのでした。掛け軸や額装した絵だったら、普通の床の間でいいのだが、キャンバスを剥き出しで壁に掛けることがほとんどの、先生の抽象絵画には向いていない。床の間によくある聚楽壁の土色も合わない。壁が白色に限るのは、(id:osamuharada:20090415)の「ベティの白い壁」の教えのとおり。ただし白いペンキ塗りでは和室にならないから、ここは本漆喰の白壁でいこう!と、わりと簡単にカベ問題は解決。しかしまた平面だけの白壁では無機質になりすぎるし、部屋のデザインをどうしたものか悩んだり、モダン数奇屋の建築家吉田五十八だったらどうするだろうかなどと、あれこれ考えてのあげく、やはり和室には床の間が必要であると結論。しかしてこのような不思議な自己流床の間?を思いついたのであります。
三角形の漆喰の下がり壁の内側には、照明器具が埋め込んであり、夜にライティングをすると、横に長い長方形の内壁だけがボーっと浮かび上がります。これでも床の間のつもりなんで、季節感に合わせて絵を掛け替えてみたりする。やがて、とっかえひっかえ好きな絵を掛けることが、古人の考えた床の間の愉しみ方なのだ、ということに思い至りました。床の間という、プライベートなギャラリーを、自宅に持っていた昔の日本人は、現代人よりずっと美術好きだったのかも知れませんね。