東京のくず餅

osamuharada2009-05-20

昔の東京ッ子にはお馴染みのはずの「くず餅」を久しぶりに食べてみたら、これがまた煎茶にピッタリだったので、嬉しかったなというだけのツマラン話です。 子供の時分には、まわりに親類縁者の年寄りたちがまだ健在で、ジーさん&バーさんの土産物といえば「くず餅」が定番なのでした。それというのも江戸時代から、くず餅は近隣の神社仏閣の門前で売られていた安い菓子だったからで、年寄りがいつも参詣の帰りに必ず買ってくるのが「くず餅」というわけ。寺参りなら、川崎のお大師さんか池上の本門寺、宮参りなら、船橋の大神宮さんか亀戸の天神さん。どこへ行っても庶民的な「くず餅」が名物なのでした。 「葛餅」と書きたいところだけれど、江戸のくず餅には、本物の葛は(高価だったので)入っていない。小麦の澱粉を一年くらい寝かして、醗酵させてできた餅なのです。砂糖は入れない。なのでほんのちょっと酸味アリ。何故か三角形に切ることに昔からなっていて、それに黒蜜と黄な粉を適当にかけてできあがり。 後年、京都で本物の葛餅を食したおりに、アレーッ?何コレと思ったわけです。東京の方がまったく別物なのでした、これじゃ偽称だよね。おまけに最近の東京くず餅は、原材料が中国モノだというから危険かもしれないし。 そこで近頃入手したのがコレ。オーガニック屋さんがすべての材料に凝りに凝って作ったくず餅です。しかも小麦澱粉だけでなく「本葛入り」ということで、下賎な菓子のはずが、ちょいとだけ高級。 うまくて懐かしいのが同時に味わえましたよ。 うちの親類で、いつもくれる手土産がくず餅だった「人形町のおばーちゃん」の笑顔を思い出す。若い頃は芳町芸者で出ていて、後に「鯉家」という置屋のお母さん。どこか粋なお婆さんだったような記憶があり、成瀬巳喜男監督の映画「流れる」(これは柳橋)に近似した世界の住人だったのでしょう。 ぼくにとって「くず餅」は、ふるさと東京の味覚といえるかな。コレに合う煎茶は、「海久保」が爽やかでした。
海久保については、(id:osamuharada:20080921)