寺町古書店・竹包楼

osamuharada2008-11-12

京都の続き。「一保堂」を出てから、昼めしを「河道屋晦庵」で鴨南蛮そば。 寺町通の「鳩居堂」で、お土産用に鉄斎書『火用慎』の札。文字にかぶさる龍の絵が気持いい。 通りの並びにある古色蒼然たる「竹包楼」で、以前から探していた富岡鉄斎の扇面ばかりを集めた本『鉄斎扇面』をゆくりなく発見。コレはちょっと興奮しちゃったね。昭和四十一年筑摩書房刊、印刷は便利堂。小林秀雄中川一政による監修。扇面は164図版が掲載。 鉄斎が人に挨拶や御礼のために贈った扇子ばかり。年代も広範囲で作品集として申し分ない。
「竹包楼」のご主人に、鉄斎の書いたお店の看板はもうはずしてしまったんですねと話しかけると、外気に晒して痛んできたので大事に保管してある由。残念だけど良かった。鉄斎がこの古書店に足しげく通った頃は、なんとすでに五代目の主人の時だったというから、ほんとに古くからある本屋さんなんだ。鉄斎はここに手弁当でやって来ては、高額すぎて買えない蘇東坡の古書などを二階の部屋で読ませてもらっていたという。鉄斎がそのお礼に描いた屏風絵その他が「竹包楼」には残っている。 ぼくには何度訪ねても、この店は江戸時代へとタイムスリップする場所なのでした。
ズッシリと重たく大きい本なので持って歩くのが大変。送ってもらえばよいものを、買ったらすぐに読みたくなる悪いクセが出て、タクシーで紫野「はしもと珈琲」へ急ぐ。桜井さんの旨いウィンナーコーヒを飲みながら、ユッタリと鉄斎の仙境に這入りこむことができた。上の扇面は、京都紅葉の名所、東福寺通天橋を描いた《 通天晩秋 》図。鉄斎の敬慕した売茶翁がここで茶店を開いたという故事から、画中の点景人物の誰かが売茶翁なのかも知れないなと思う。 これで、絵でも紅葉見物はできたことだし、欲しかった鉄斎本を、他ならぬ鉄斎ゆかりの竹包楼で見つけたことが何より嬉しかったなという、ちょっと自慢話。
鉄斎については (id:osamuharada:20071027)