博士の異常な愛情

osamuharada2008-08-06

スタンリー・キューブリック監督のアーカイブスという、重たくて大きな作品集です。あの《2001年宇宙の旅》や《時計じかけのオレンジ》、最後となった《アイズ・ワイド・シャット》に至るまで、すべて好きな映画ばかりのシーンが満載なので、何度見ても見飽きない本。この頁は十代の頃に観た途端好きになった《博士の異常な愛情》1964年、という映画のタイトルシーン。ブラック・コメディの傑作です。なのでタイトルの手描き文字からしてヘンに可愛いところが変でしょ。ラストシーンで世界核戦争が始まったことを示唆して終わる辛辣な風刺喜劇。原題は “DR.STRANGELOVE,OR:HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB”で、ヘンに長いところがすでに変でしょ。軍産複合体や軍人をブラックユーモアで揶揄する手際は、さすがキューブリック。ニューヨーク生まれのユダヤ人ながら、こういう映画を撮ったせいかアメリカを嫌い英国に住んでいた。スピルバーグとは違って、ハリウッド映画からもアウトサイダーでいたところまでカッコイイ。  本は“ THE STANLEY KUBRICK ARCHIVES ” TASCHEN
今日は、広島「原爆の日」だった。それでこの映画を思い出したわけ。というのも主要な登場人物の一人、名優ジョージ・C・スコット演じるバック将軍には、「爆弾男」と異名をとった実在モデルがあった。それがアメリカ空軍のカーチス・E・ルメイ将軍だ。 広島への原爆投下を命じた司令官。好戦的な当時39才のこれが張本人です。 この男がしたことは、ドイツのドレスデン空襲から始まり、硫黄島、沖縄、名古屋、東京、大阪、神戸など、空爆と大都市への無差別絨毯爆撃。そしてついに広島、長崎への原爆投下。さらに朝鮮戦争ベトナム戦争までも指揮したというから絶句する。驚いたのは東京オリンピックがあった1964年(この映画も同じ)、この非情なる爆弾男ルメイは、日本の航空自衛隊育成に尽力したという理由?で、昭和天皇より勲一等旭日何とか勲章を授与されたのです。時の総理大臣は佐藤栄作(アベ元総理の大叔父)、防衛庁長官小泉純也(コイズミ元総理の父親)だった。これってブラック・コメディより、もっとキツーい冗談としか思えないよ。それにしても、悲しすぎて笑えない。