大徳寺の雪

osamuharada2008-02-27

日曜日の朝、京都のホテルで目が覚めたら雪だった。軒下にはつららが並んで下がっている。二十五年間毎年、京都へ通っているので、雪見観光は何度もしているけれど、やはり雪の京都は格別に美しい。雪の思い出も数々ある。 さて今日はどこで雪見をしようかなとベッドの中で考えた。近頃、雪の金閣寺はあまりに喧伝され過ぎて、おそらくこれでは観光客満杯で大変なことになっているだろう。雪の詩仙堂も好きだけれど、一乗寺からだと帰りのタクシーはつかまらない。あれこれ考えて大徳寺にした。洛北だから雪は多いはずだし、あそこなら体が冷え切っても、とりあえず近所の「はしもと珈琲」へ寄れば暖をとれる、などと昔に比べたらトシヨリくさくなっているのが情けない。  大徳寺龍源院の、苔と石の庭が好きで、雪が降ったらどうなるだろうかと行ってみると、水気の勝った雪は、石の部分で解けてしまって、いつもなら鮮やかな緑の苔の部分だけに積雪があった。ぼくの場合はアブストラクト好きだから、この石と白い雪のつくる抽象芸術に感激してしまうのです。この寺は訪れる観光客も無く、しんしんと降る雪の静けさが、ことさら異次元空間を創りだしている。時折、雪が降っているのに薄日がさして、雪はさらに白い輝きに溢れ、言葉にならないほど美しい。完全に自然と抽象の世界。 回廊を巡って、最も小さな東滴壷という石庭でも(左の写真)、面白い雪の積もり具合。現代美術などよりずっといい。雪の日は、どこへ行ってもいつもと違う景色になるから、見飽きる事がないもんですね。 ただし寒くて身体のほうはガチガチになる。はしもと珈琲へ行ったら、寒さでふるえているのを見て、猪田さんのお弟子の桜井さんが、今日はまずウィンナーコーヒを飲んでみてください、とすぐに出してくださった。まるで雪のようなクリームの、ほど良い甘さが珈琲を引き立て、味覚そのものまでが何故かとても暖かい味がした。すぐに暖まって、元気が戻ってきた。 北野の天神さん境内東側にある、ぼくの好きな白梅の木(コレは自分のものと勝手に決めてる一本)も様子を見に行った。しかし、去年今頃来た時には暖冬のせいで満開だったものが、今年は可愛い蕾のままで一輪も咲いていない。白梅のかわりに、散る雪が白く舞っていたのでした。