PENGUIN BOOKS のカバーデザインと、表紙700冊分を選んだ二冊の本を、芸術新潮の三好さんからいただいた。PENGUIN BY DESIGN のほうは、英国のデザインや活字書体、イラストの変遷などがよく解かって、ぼくには面白かった。表紙のラフスケッチも出ているし、懐かしやイラストレーターAlan Aldridge がどうしてペンギン・ブックスの仕事をするに至ったかなど、興味がつきない。ただしこの本はかなり専門家向き。 Seven Hundred Penguins の方は、ヴィジュアル本好きのひとなら、700冊のデザインを気楽に楽しめるでしょう。ペンギン・ブックスは、1935年から現在まで刊行されている廉価版のペーパーバックで、内容も幅広く、それに合わせてデザインに変化を持たせてあるところが見所ですよ。あの手この手で見せてくれる。
700冊を集めた本の、その装丁はというと、子供の描き文字デザイン(上の写真中央)の表紙の、パロディになっていて、Celebrating Penguin's well-loved covers.などと宣伝文句がクレヨンで可愛く書かれています。本歌取りの元となった本は、日本の場合は映画としてよく知られた、あの「アラバマ物語」の原作 To Kill a Mockingbird です。表紙の手描き文字は《’60年にピュリッツァー賞を取った。全米で82週間連続ベストセラー。このペーパーバックが出る前すでに500万部も売れたのだ!「風と共に去りぬ」以来こんな凄い本は絶無なんですぞ!》などと書いてある。しかし子供の手描き文字と死んだ小鳥の絵のせいで、大げさな文言がかえって可愛らしく感じられる。すでに有名な本の文庫化なので、このアイデアが生きるのです。実に上手い表紙デザインだよなァ、まいったね。このモジリをまた700冊本の表紙にするとは、洒落てるな。
邦題「アラバマ物語」は、アメリカの良心を代表すると言われた名作。ついでながら、映画の父親役アティカスで、グレゴリー・ペックはオスカー主演男優賞をとりましたね。これから子供の父親になる人には是非見てもらいたいな。 主人公のヤンチャな女の子スカウトは、小説の原作者ハーパー・リー本人がモデルで、友達ディルという子は、何とあのトルーマン・カポーティなんですよ。リーとカポーティが幼馴染だったということは、一昨年オスカーをとった映画「カポーティ」(実に良くできた映画だった)を見れば、出てくるので良く解かります。 また「アラバマ物語」の映画タイトルも素晴らしい。音楽がエルマー・バーンスタインなので、あのイームズのフィルムを彷彿とさせる素晴らしい映像です。タイトルまでも名作。
Seven Hundred Penguins (Art & Design)
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