軽井沢の こけももジャム

osamuharada2007-10-08

到来物のパウンドケーキには、隠し味にこけももジャムが練りこんであった。「こけももジャム」という言葉が、ぼくに遠い昔の軽井沢を思い起こさせた。中学時代から親友の家が中軽井沢に貸し別荘を借りていたので、夏休みにはほぼ毎年行っていたことがある。 六十年代の軽井沢は、まだ人も少なくのどかで、夏に涼しく、どこか北欧の(まだ行ったこともなかったのに)気分だなと勝手に思い込んでいたものです。友達のところは中軽井沢の星野温泉近くで、高校時代に行った時、近所に「こけもも山荘」という瀟洒なコテージができていた。そこの特産品「こけももジャム」というものを初めて食べ、以来ヤミ付きになったのでした。大学時代になっても親友三人組みで、その頃は軽井沢だけでなく、車にテントを積んで信州の湖水や高原を巡っていましたが、必ず土産に東京では手に入らない軽井沢のこけももジャムを持ち帰りました。そして秋になるとぼくの朝食は、トーストした食パンにバターを塗り、その上にあの酸味が強烈なこけももジャムをたっぷりのせて食べる。それにハマっていた時期があった。幸い、酸っぱいなァ!と言って妹も両親も手を出さなかったので、このジャムを独占できたのであります。
軽井沢は七十年代から、アンノン族という女子連のメルヘンな観光地になってしまい、我々男子は自然と足が遠のき、こけもも山荘も店仕舞いをして、こけももジャムもまたいつしか忘れてしまいました。 それで先日、急に思い立ち、懐かしきこけももジャムをまた食べてみたくなり、探したのがコレ。旧軽井沢に昔からある中山農園にはまだあったんですね。こっちも昔食べたけれど、こけもも山荘のものより、砂糖が多いのか、ぼくにはちょい甘かった。しかし、あのこけもも独特の味覚をもう一度ということで、送ってもらいましたよ。 おお三十年ぶりのこけももジャム。かのプルーストのマドレーヌ菓子効果が充分にありました。そしてやはりこれは、トースト、バター、こけももジャムという三位一体の食べ方にすぐるものは無いだろうという結論に達したのでした。再び、コレに当分ハマりそう!