さよなら奥村書店

osamuharada2007-10-04

昨日、元FRB議長で金融界のマエストロと呼ばれたグリーンスパンが、中国の上海株にバブル経済の特徴が現れたことを講演したという。すでに都市に限定された土地バブルは、現在パリやロンドン、ローマ、ミラノなどを襲い、土地は高騰しすぎて誰も住めなくなるという冗談が囁かれているそうだ。いよいよ世界バブルが始まったらしい。かつて東京では六本木ヒルズで官民一体の再開発が始まったけれど、最近はヒルズを借りていた会社(外資系か)が引越しをしだして空家が出ている。ホリエモン(懐かしいな)や、回転ドア児童殺人事件、恐怖の高層エレベーター故障など、開けてみたらロクでもなかったヒルズのバブルは終わっちゃったのか。現在の東京で、地上げ屋が徘徊して土地バブル進展中の場所は、銀座だそうです。古い町並みは無くなり、ビルの谷間にわずか残った古い店舗も次々と姿を消してゆきつつあります。
銀座・奥村書店(id:osamuharada:20050317)も、ついに年内で店じまい。再開発には勝てず、そのかわり土地に凄い高額の値段がついたので売って、隠退(もうお歳ですから)されるそうです。良かったな。先代の戦前から続く演劇邦楽関係の専門古書店。昨日はご主人といろいろ思い出話をしました。「ぼくの美術帖」を書いた三十代の頃、古本探しでは随分お世話になったこと。オジサンが自転車でぼくの仕事場へダンボールいっぱいの本を運んでくれたことなど懐かしい。
再開発で歌舞伎座もじきに取り壊されるそうで、先月は歌舞伎座向いにあった、文化堂レコード(歌舞伎、邦楽、落語などが専門)が店をしめたばかり。このレコード屋さんでは、先年亡くなった番頭さんとぼくは仲良しで、いろいろ日本の伝統文化情報を教えてもらった。新しく落語全集などの重たいレコードが出ると、やはり自転車で運んで来てくれました。ぼくにとって銀座は近所の商店街だったのです。その古い銀座は死んで、外資ブランドのカバン屋ばかりが並ぶバブルの塔ができあがりました。やがて必ずやってくる、世界バブルがはじけた後の銀座はもう見たくないな。