イッチンの皿

osamuharada2007-09-06

汐留でバーナード・リーチ展を観てきた。日本民藝館蔵のすでに何度も見たものばかりの陳列だったけれど、改めてリーチは絵がヘタクソだったなと思った(残念ながら)。ヘタなだけでなく風景人物動物植物画のことごとく、西洋人の描く誤った東洋という奇妙な後味が残る。日本人に背広が似合わない如く、英国人には着物がまったく似合わないことを連想してしまう。百貨店の催し物でリーチが内装デザインをしたという和風書斎が復元展示されていたけれど、床の間、飾り棚や抽き出しにいたるまで、すべてがきっちり左右対称の配列。西洋人特有のシンメトリック大好き構成で、これでは日本の数奇屋造りの自然素材も台無し。ここでは英国人リーチが着物を着てるだけでなく、ちょん髷まで結っている感じ。似合わないよね。 非対称の美意識が解からないでは、日本の美にはとても到達し得ない。一番肝心な基本的なことを何故、白樺派の朋友たちはこの外人に教えてあげなかったのかなあ。などなど不満はあったけれど、無地か刷毛目や櫛描の抽象的図柄で、ガレナ釉やスリップウェアーの英国スタイルの陶器類は、やっぱり素晴らしい。美術として鑑賞するより、自分で日常的に使ってみたくなる物ばかりなのでした。コーヒーポット、ピッチャー、エッグスタンド、どれも欲しいな。ただし和食用にはいらないな。
この写真は、島根県布志名窯の当代・舩木伸児さん作のお皿。長年愛用しているけれど、夏の暑い時期は合わないので避けて、秋冬に衣替えして使っています。日本にも古くからあるイッチン技法(筒描とも云う土漿や釉薬を盛り上げる描法)で、ペイズリー風の模様がレリーフになっています。墨流しのような偶然性は乏しく、しっかり図柄を描く技法です。このイッチン技法も英国ではスリップウェアーと呼んでいる。 長方形の皿にはこんがり狐色にトーストしたパンかサンドウィッチが合う。この季節なら、緑釉の皿には一個の熟したイチジクを置きます。ガレナ釉に似た黄色釉の皿には白いメレンゲなど。そして使わない時は飾り皿に。 舩木さんのお祖父さんはバーナード・リーチのために、浜田庄司らと英国コーンウォール地方セントアイブスに窯を造った同人ですから、この舩木伸児さんの作品には無理なく英国的要素が具わっていて、ごく自然体な感じがしていますね。