画家の石鹸

osamuharada2007-06-25

小学一年生で油絵を描き始めて、二十代にアクリル絵具が登場するまでは、油絵具ばかりを使っていました。描いた後の手についた油絵具は洗っても拭いても簡単には落ちず、プルシアンブルーなどは刺青のような色合いで数日はとれない。ヴァーミリオンレッドは指が辛子明太子の様な感じになる。色気づいた十代の頃にはこれがとても恥ずかしかった。石鹸ではなくベンジンで落とすものだけれど、今度はそのベンジンの石油臭さがずっと残って頭痛がしてくる。油絵具というものは厄介なもんでした。 その古くてつらい?記憶があったせいかな、四年前パリ、サンジェルマンにあるEcole des Beaux arts を覘いて絵描き気分になって外に出たら、すぐ近くの画材屋でこの石鹸を見つけ、思わず嬉しくなってつい買ってしまった。それがこのSavon Special Artiste。麦藁帽子をかぶった画家がイーゼルを立てスケッチをしてる絵がいいな。絵描きの幸福な時間です。 帰って早速一個は手に付いた絵具落としに用いてみたところ、すぐ落ちる水性のアクリル絵具ではゼンゼン面白くもなんともない。肝心の油絵具はずっと放置したままだったのですっかり固まってもう使えず、手を汚すことができないで石鹸効果は分からずじまい。そもそも今さらこのトシで絵具だらけが恥ずかしいなどとは思わないや。というわけでもう一個はこのままアトリエの飾りモノになってしまいました。しかしこれを眺めていると、将来は画家になるぞと祈願した小学生の頃の、手のひらに付いていつまでも落ちなかったプルシアンブルーの恥ずかし色を何故か思い出す。トラウマになってたんでしょうか。