ニューヨークの川端実・続き

osamuharada2007-03-09

「ニューヨークの川端実」の本について、岡本仁さんがブログに書いてくださいました。それを読んで思い出したこと。以前、岡本さんがマガジンハウスのrelaxという雑誌の編集長時代、ぼくが美術に関するコラムを担当したことがあって、その4回目に川端実について雑文を書いたことがありました。作品を紹介する見開きの、次の頁にこの写真を掲載したのでした。1990年2月、ニューヨーク57番街、Jack Tilton画廊での個展の時に撮った先生のスナップです。川端実はニューヨーク・スクール(派)の総本山ともいえるBetty Parsons画廊の専属でした。ベティが亡くなる’82年まで契約していて、その後を継いだのがジャック・ティルトンでした。この写真を撮った後、ミッドタウンの割烹店のお座敷で、ジャックの招待による川端先生を囲む宴会がありました。美術を愛するニューヨークの人たちだけが集う和やかなひととき、ぼくには至福の時間でした。その前に画廊で見たばかりの先生の新作が脳裏に焼きついていたせいもあったのでしょう、子供の頃から絵が好きで生きてきて良かったなぁと、強く感じた一夜でした。
写真横のコラムの一部に、ぼくはこんなことを書いていました。《 川端実は、ぼくの敬愛する師でもある。並んで個展の絵を見ていたとき、先生はこんなことを言った。 「いいか、赤って色は強いだろ。しかし強い色なのに、赤ってやつだけは、前に出ないで奥に引っ込む色なんだ。面白いもんだな」 またあるとき「絵ってのは、どこで筆を置くかが大切だ、描きすぎてはいけない。どこで止めるか、そこがいちばん難しいところなんだ」と教えてくれた。》 4年前の雑誌をひろげて見ていたら、16年前の日のことが鮮やかに思い出されました。
岡本さんのブログです。http://blog.livedoor.jp/fab777/archives/50925218.html