祥瑞の茶碗

osamuharada2007-03-12

若い頃からいつも煎茶を喫っする習慣がついてしまって、それに伴い気に入った煎茶茶碗もいくつか収集するようになり、毎日の煎茶を楽しんできました。時には何か特に嬉しいこと(例えば今度の川端実展)が決まったりすると、この祥瑞(ションズイ)写しの茶碗を出してきては、ひとり煎茶を嗜む。ぼくにとっては特別なおめでたい儀式のつもりなわけです。この茶碗を使うと、精神はキリッとして引き締まり、一種爽快な感覚を喫茶から得られるのです。単なるプラシーボ効果かもしれないけれど。
江戸時代に流行した本物の「祥瑞」は、現在ほとんどが博物館美術館の重文扱いで、中国明代後期の景徳鎮窯で焼かれた染付け(中国では青花)の磁器をさして云います。日本の小堀遠州のような茶人が景徳鎮に特別注文するといった、江戸時代人の中で流行した中国趣味が反映したものだったのでしょう。侘び寂びとは別の世界観、どちらかといえば男っぽい感覚ですね。染付けの茶陶としては最上手とされています。景徳鎮の民窯で呉祥瑞という人が作陶したと言われていますが、実際はよくわかっていません。
むかし鏑木清方の最高傑作「三遊亭円朝像」を見た時、高座の円朝が両手で持っている大振りの茶碗も祥瑞写しだったので、ますます憧れがつのり、いつかぼくもあんな本格的な祥瑞が欲しいなと思っていました。そしてやっと見つけたのがこれ。現代京都の作家の祥瑞写しです。店頭で見染めて一目惚れというやつ、何度も迷い、自分には高額だったけれどついに意を決して、40歳になった時の記念に求めました。以来、何かのちょっとした転機や慶事に用いています。中国では古く「祥瑞」という言葉は「福」と同義であると、これは最近知ったばかりでした。