冬の書斎

osamuharada2007-02-19

陽のあたる、冬の書斎ほど居心地の良いものはないなと思うこの頃。これは島のアトリエの3階で、30代半ばにぼく自身が室内と家具をすべてデザインしたものです。コの字型に大きくガラス窓を付けて、外は例によってお金のかからない借景で、その180度パノラマを部屋から一望できる設計になっています。あの頃は家具もほとんど自分でデザインすることがマイブームだったので、この椅子も、東京の仕事机に合わせて作った椅子と同じデザイン。木は楢材(東京のほうはタモ材)を使用。奥のテーブルとセットで、レンガ壁にどことなく雰囲気を合わせて考えたような気がします。椅子の座面の、革の張り方は、木枠のある中国式に。横幅を広くとり座高は低くしてあります。この椅子は、座って正面を向くと、海が見える位置にいつも置いてあります。夕陽が遠く水平線に沈むのを、この椅子で20数年眺めてきたわけです。これは主にそのための椅子なのでした。
それにしても我ながら若い頃から随分ジジクサイ趣味だったなァと述懐。写真手前には作りつけのデスクがあり、昔はここでもイラストの仕事をしようなどと座って試みたものの、つい自然の景色に目を奪われて、仕事なんかアホらしくってヤッてられるかよとすぐやめた。爾来バードウォッチングと読書専用のデスクです。まだ若い頃はオレもデザイナーのはしくれだと自負して、自分自身であれこれこだわってデザインをしてみた家具類でした。しかしそれは経年とともに、いつしか自分の生活と体にすっかり馴染んでしまった。自分でデザインしたことすら忘れている。そうなると客観的に良いデザインかどうかは、どうでもよい事になっちゃうもんですね。見た目のデザインのかっこよさなどは、もうどうだっていいんだと。デザインとは裏方さんのように消えて在ること。つまるところ、前に書いたバーナード・ショーの執筆小屋こそが、ぼくには究極のグッドデザインに思えてならないのであります。と、またどうでもよい話。