今年を振り返る続きですが、美術のほうで、ぼくにとって最も印象深かった今年のNo.1は奈良斑鳩へ行って初めて見てきた、法隆寺所蔵の国宝「百済観音」像でした。いきなり美的感動に引きずり込まれて、身動きができなくなるほどの素晴らしい神秘体験でした。そして自分にとっては全くの新しい発見になりました。以来この百済観音像が頭から離れず、ぼくの最新研究テーマになっています。その結果、美術史の常識がデタラメなことにもまた気がついちゃったわけです。通称百済(朝鮮)の観音さまになってるけれどゼンゼン違うな。様式的にも隋、唐(中国)なんかとはさらに別件。そもそも由来は何も判っていない、日本のクスノキ一本造でできた仏像なのです。これはもうただの仏像オタクなんかには任せておけない、日本史の核心部分に触れるモンダイなので、これ以上は(危険だから)言えません。ぼくには美意識のルーツ問題なのですが。
撮影禁止だったので自分では撮れませんでした。おそらくヤフーから引っぱってきたこの画像をご覧になっても、何だコリゃと思われたことでしょうね。ぼくもそうでした。しかし美術は実体験あるのみ。それに宗教的な威圧感から、仏像を純粋な美術として鑑賞できる人はそういないもんなのです。しかし偉そうなこと言っちゃうと、美術には人の愛玩や所有欲などとはほど遠い、雄大で崇高なる領域の美が存在しているのですね。これが今年のナンバーワンでした。ちなみに去年のぼくの美術部門一番は、なんといっても再発見された長谷川等伯の「柳橋水車図屏風」でした。これもいまだに感動を後に引きずったままです。さて、来年はどんなモノに出っくわすのか。楽しみは年々歳々やってくる。
追記 法隆寺百済観音の謎 [id:osamuharada:20080706]