小津安二郎の湯呑茶碗

osamuharada2006-11-23

今月はじめ朝日新聞日曜版の読書欄で、中野翠さんが拙著「ぼくの美術帖」を紹介してくださいました。嬉しかったので何かお礼をと考え、たしか中野さんは小津安二郎映画のファンだったはずだと思い出したので、銀座の『東哉』へ行って小津にゆかりの湯呑茶碗を贈ることにしました。選んだのは’58年映画『彼岸花』のなかで田中絹代が使っていたのと同じものです。縦縞柄の湯のみは、ぼくの愛用しているもの(写真左側)の色違いで赤い色の縞、内側の柄は呉須(ブルー)のままで、サイズは女性向きにひとまわり小ぶりなものにしました。中野さん、これは持っていなかったとのこと、大層喜んでもらえました。ビンゴ!で良かった。
写真の湯呑は二つとも『彼岸花』で使われていた湯のみと同じもので、左側の縦縞は佐分利信が使用。これは小津自身も普段使いだったらしい。右側のは築地の旅館の場面で山本富士子が使っていたもの。こっちは小津が母親の法事で実際に配ったものだそうです。
マニアックな話ですが、映画の中の小津の小道具への配慮は、いつも的確だなァとつくづく感心しますね。縦縞の色違い湯呑は夫婦役の佐分利信田中絹代の間の食卓に置かれているため、アットホームな雰囲気がひと目で観客に、それも無意識のうちに伝わってくる効果があります。さらに写真右の湯のみでは、京都から出てきて長逗留中の旅館の客である山本富士子の前に置かれ、旅館を訪ねた有馬稲子の前には普通の茶たくに汲み出し茶碗が置かれます。いきなり画面に二人が登場しても、どちらがお客さんでどちらがお迎えをするほうか、すでに視覚的に表現されているんですね。ほんとは旅館で常連客にこんな湯のみは出さないとは思うけれど、そこが演出というもんでしょう。
銀座『東哉』 東京都中央区銀座8−8−19
中野翠さんの朝日新聞記事は、http://book.asahi.com/mybook/TKY200611070259.html

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