絵本の装丁

osamuharada2006-11-02

厳寒のニューヨークに行った時、57丁目Rizzoli書店の2階で見つけた豆本です。紙箱から出すと、ウォームグレイ色のもこもこしたフェイクファーが表紙を全面被っています。寒かったので冷たくなった手にすると、ほのかな暖かさがありがたかった。開けると中身という感じで絵本が始まります。‘LITTLE FUR FAMILY’と題して、小さな毛皮動物?のお話です。木の幹に住んでいるから小型のリスくらいの大きさなんでしょう。見た目は熊とも犬ともつかない不思議な空想動物。外へ出かける時はさらに毛皮のコート、毛皮の帽子、毛皮の靴と完全防備です。内容と装丁がこれほど可愛らしくピッタリくるデザインは他にはあまりないでしょう。子供向けにはこういう装丁本がぼくは好きです。
オリジナル版は1946年(ぼくと同い年だ)で、ストーリーは、かの Margaret Wise Brown さんの原作です。最近はどっかのプリンセスの愛読書だったということで、同じ原作者「おやすみなさい、おつきさま」がベストセラー(日本だけのブーム)だそうですが、この毛皮絵本のほうもまだ再販され続けています。ただ谷川俊太郎さん翻訳の日本版は、残念ながら普通のハードカバーで、普通サイズで作られています。
絵のほうは Garth Williams さんで、この人の他で描く人物の絵はどうも怖くて気味悪いので好きになれないのですが、老犬が主人公の‘Mister Dog'のような人間以外の動物では凄くいい味が出ているのです。この毛皮ファミリーも皆いい。本文途中で現れる謎の The little tiny tiny fur animal君はさらに小さくて(多分3cmくらい)一番可愛いらしいですね。杖をついた毛皮お爺ちゃんが登場するとガース・ウィリアムス画の独壇場です。その枯れたヨボヨボ感がたまらない。