ゴッホのばら

osamuharada2006-09-26

マガジンハウスの雑誌ku:nel『クウネル』今号のなかの、「私の選ぶ1枚」というページで、ぼくは上野の国立西洋美術館にむかしからあるゴッホの「ばら」という小品を選びました。このテーマは読者がもしこの絵を観たいと思ったら、いつでもすぐに美術館へ出かけて、実物を観る事ができるものを紹介する、というのが編集の主旨です。絵画は複製ではなく、実際に実物を見ることが一番大切だといつも考えていたので、とても良い編集企画だなと思いました。ただ観るだけではなく、もとより美術は体験するとでもいった感じが強いものなんじゃないかなァ。
クウネル読者層は女性が多いだろうということで、ぼくはこの薔薇の絵を選びました。もしこの絵の実物を観たら、まず、分厚くキャンバスの上にのっかって盛り上がる絵の具の力強さ、スピードのある筆勢にビックリすることでしょう。そして絵の具そのものの美しさであるはずのものが、本物の自然そのものの美しさであるかのような感じがしてくるのです。そうなったら観る人の心を捉えて離さないだけでなく、わずか40cmくらいの画面の中に、観る人は吸い込まれてしまうでしょう。圧倒的な存在感のこころよさ。そこには一陣の風が吹いていて、草花の薫りさえ漂い、ゴッホのつむぎだした命の輝きを見い出すことでしょう。というのが、ぼくの勝手な推薦理由なのでした。
ぼくはこの絵を子供の頃から好きだったので、今ではすっかり自分の持ち物であるかのような気分です。独り占めは良くないから、たまたま美術館に貸し出しているわけです。と錯覚しています。それくらい好きな絵の一つです。ゴッホといえば「ひまわり」や「自画像」や「星月夜」、どれをとっても凄いけれど、この「ばら」(サインも無いけれど)も知られざる傑作なんですよ。まずこのブログの小さな写真では解かりにくいので、クウネル誌上で「ばら」の複製をご覧になって、それから実物に会いに行ってみようかどうか、ご判断することをオススメいたします。一応あれはぼくの「ばら」なんですけど、エンリョなくどうぞ!