銀座・天一のうちわ

osamuharada2006-08-23

前述の部屋を和洋折衷にした今年の夏は快適でした。もともとクーラー嫌いなので扇子かうちわ必携なのですが、これも和洋折衷スタイルの気分に合わせる(どうだっていい話ですが)となると結構難しい。そこでふと思い出して用いたのがコレ、銀座老舗の天ぷら屋さん「天一」で、夏に行くといつもオマケにくれるうちわです。今年はコレがやっとピッタリしてきました。オマケなのでちょっと安っぽい感じも、かえって気楽で気に入り使いやすい。
天一では昔から外人客が多いせいか、銀座本店のたたずまいは室内も和洋折衷です。’60年代のアメリカ人が考えたような、ちょっと間違ったJAPANISMの感じがするので懐かしい。レジの前にフランク・シナトラが来店して天ぷらを食べている写真を飾ってあるのは、シナトラ・ファンとしてはたまらないところです。地下にシャガールの夜空に浮かんでいる人魚の絵(本物)が飾ってあるのですが、いつもこの人魚が海老の天ぷらに見えてしまい大変申しわけなく思っています。また天一は、銀座生まれの岸田劉生「麗子像」などを持つ美術館まであり、いかにも銀座の一流店といった感じがしますが、そもそも銀座という町が明治初年にできたときから和洋折衷の土地柄なのでした。
このうちわの和風英文描き文字、ちょっとヘタクソな感じが可愛いですね。よく似た文字で、ドリス・デイが主演のラブコメディ、'59年映画“PILLOW TALK”(日本題『夜を楽しく』)のタイトルを思い出します。画面中央に障子があって、そこにこの和風英文描き文字でタイトルが連続して現れますがこれも可愛い。関係ない話ですが、「ピロートーク」って清少納言枕草子」を英訳するとピロートークでしたね。英語では男女の睦言のことです。言葉もなんだか和洋折衷。レタリング好きのぼくにとって、こういう素朴で複合文化的デザインは見ていて飽きないものの一つです。どうもヘンな趣味なのですが。