川端 実

osamuharada2006-04-11

『ぼくの美術帖』復刊にぴったり(自分にとって)のタイミングですが、4月8日から6月4日まで、京橋のブリヂストン美術館に我が師である川端実先生の作品が1点出品されているので早速いってきました。はやる心で、順番どおりに観るというのももどかしく、いきなり案内図を見て先生の絵のある第10号室に突進しました。外の廊下からその絵が目に飛び込んでくると、部屋に入る前からすでに感動してしまいました。大きめの作品は左右2m以上のサイズがあり、先生らしく無題です。視界いっぱいに近寄って観てみると、鮮烈を極めた赤の画面に吸い込まれました。晩年(なんと82歳で)の傑作です。しばらくして釘付け状態から醒めて我にかえり周囲をみると、同じ部屋にはジャクソン・ポロックやピエール・スーラージュをはじめ戦後日本の抽象画も並んでいたことにやっと気が付きました。しかしあまりに素晴らしい先生の絵をまず観てしまった後では、うわの空になっている自分をそこにただ見出したようなわけであります。
あれから1階のカフェで珈琲を飲んで、いったん気を静めてから買ったカタログを眺めていると、『ぼくの美術帖』に書いた画家で、以前からブリヂストン美術館所蔵のラウル・デュフィアルフレッド・シスレー岸田劉生の水彩などが出品されているのを確認しました。今度は最初からと再び2階に上る階段の途中ではアリスティド・マイヨールのブロンズもありました。ぼくの雑文集を読んで下さった方には、是非ともこれらの実物を目にしていただきたい。美術はまず本物を見ることからすべてスタートするものなのですね。上の写真にある川端実の作品でも、印刷物のカタログではとてもその絵の凄さを再現することは不可能だからです。特にカラリスト川端実作品は、実物に接する以外には本当に見る事は出来ないでしょう。今月はプラド美術館ティツィアーノも、日本にやって来ているから忙しいよなァ。遠いルネッサンスの大作を日本に居ながらにして見られるなんて最高ですよ。これもまたポスターなどで見たような気にならないで、出かけていって実物を是非ご覧くださいね。


ブリヂストン美術館のホームページ