紫野松風

osamuharada2006-03-17

「珈琲」のところで書いた京都の「はしもと珈琲」さんにまた行ってきました。飲んだコーヒが「紫野ブレンド」。ぼくにとって紫野(むらさきの)は祖父ゆかりの地名なので、なんだか嬉しくなる命名です。もちろん猪田さんゆずりの旨いコーヒです。
そこでぼくの京都紫野ツアーを紹介いたします。まず、あまり観光客の行かない船岡山は信長を祀った「建勲神社」へ登ってみましょう。かなり階段が続くので、休み休み登ってくださいね。上った境内からは京の街を眼下にした絶景をお楽しみいただけるでしょう。
山を下ったら北大路通りを渡ってすぐの「はしもと珈琲」へ。お店の前の焙煎器から流れ出る珈琲のいい香りを嗅いだら、飲まずに通り過ぎることは困難でしょう。それからお店の先の赤い鳥居を過ぎて真っすぐ歩くと「今宮神社」です。ここは神社よりは東の門を出ると両側に二軒向かい合っている「あぶり餅」の店で有名です。京都でも六百年も前から続く老舗だそうで、「一和」と「かざりや」の二軒が両側から競ってお客を呼び込みます。これはちょっと膝栗毛の弥次喜多になったような気分になります。落語のほうで例えるなら「三十石」の船宿の呼び込みシーン。京都人に聞くと、二軒のうちのどちらかの店の味が良いと必ず確固たる返事が帰ってきますが、ぼくはまだ決めかねています。どちらも美味いが、いずれにしてもこのお菓子は熱い時が命で冷めたらどっちもうまくなくなる。またおおきな土瓶で飲み放題のお茶は両店ともに不味い。お茶好きにはコレがなんとも辛い。それよりここでは、昔の日本へタイムスリップしてその風情を味わってくださいね。
そこを過ぎると大徳寺の裏に出ます。木々に囲まれて美しい石畳の広い境内をブラブラ散歩して、再び北大路に出たら門前の横、和菓子の小さな老舗「松屋藤兵衛」の暖簾をくぐってください。上の写真「紫野松風」を是非どうぞ。松風という古いお菓子は、和風カステラといった感じですが、カステラより硬めで甘みも抑えてあります。最も古いのは西本願寺前の「亀屋陸奥」の松風。ポピュラーなのは御所の南「松屋常盤」の「味噌松風」でこれは上に西京味噌がのっています。そしてこの「紫野松風」は上に2,3粒の大徳寺納豆がのり、ほのかに塩味と酸味が甘みとピッタリ馴染んでいる銘菓です。お隣の大徳寺さんの名物「大徳寺納豆」をうまく利用しています。ぼくは煎茶にはあまり甘くない甘いモノというのが好きなので、京都に来たらまずコレがお土産ナンバーワンです。さらに嬉しいことにこの狭い店内の菓子箱が積んである棚の真上に、ぼくの憧れの文人画家、富岡鉄斎の扁額「江山景物新」とある書が掛っていることです。鉄斎も食べたぼくのジイサンも食べた「紫野松風」だと思うとつい宣伝に力が入りました。このお店のおばあちゃんは鉄斎のお孫さんと小学校が同級生で、よくこの店内の床机に腰掛けてその扁額を眺めていたそうです。以上、ぼくのオススメ紫野ツアー、所要時間は2時間弱です。