ビッグ・リボウスキ

osamuharada2006-01-21

この10年間での、ぼくの好きな映画ベスト・ワンは'98年『ビッグ・リボウスキ』。未だにこれを超える映画に出会っていません。コーエン兄弟の脚本監督作品としても最高の喜劇だと思うのですが、映画マニアの評価はかなり低い、マニアなんて何にもわかっちゃいないんだなというのがぼくの評価。俳優ジェフ・ブリッジスジョン・グッドマンの地に付いた自然な演技としても代表作だし、脇役のすべての配置がみごとで、キャスティングの妙というのはこういう映画のことをいうのですよ。カメラ、美術、音楽、編集と何十回観ても飽きる事が無いくらいのデキ。ハリウッド映画的に完成されたハイブローな大人の映画です。
とにかく腹が捻れそうになるくらい笑えますよ。これは日本人として一口で言えば、落語ですね。古今亭志ん生「五銭の遊び」や桂文楽酢豆腐」、三遊亭円生なら「百川」といった、男のダダラ遊びの世界に等しい。文化が爛熟した後でかもし出される男の笑いです。明治の言葉にバンカラ(風采・言動の粗野なこと、ハイカラに対して蛮カラ)というのがあるけれど、ジェフ・ブリッジス演じるデュードがまさにバンカラの見本なのです。ラスト近くでスティーブ・ブシェミの葬送をするシークェンス、ここがまた笑い死にしそうなくらいおかしいのですが、日本人観客のなかには、ここで泣いた人があったという話を映画関係者から聞きました。一般人なんてほんと何にもわかっちゃいないんだな。
映画タイトル同好会会長のぼくとしても、このタイトルは愛蔵コレクション作品のひとつです。上の写真は、プロローグの後でタイトルが現れるところです。この画面が上にあがるとボーリング場のレーンにつながり、美しい実写のスローモーション映像に配役名などがかぶります。さらにこのタイトル・シーンは、ボブ・ディランの“The Man In Me"という唄がかぶさるのです。この曲がまた個人的に大好きだったということも、この映画をぼくのベスト・ワンにしています。ボブ・ディラン’70年『新しい夜明け』というアルバムからの1曲です。タイトルが始まっただけで感動しちゃったわけです。この映画にピッタリです。一部試聴できます。→http://www.bobdylan.com/#/songs/the-man-in-me
というようなことを今頃になって書いたのは、先日、銀座で編集者のO氏と飲んでいたらボブ・ディランの好きなアルバムの話で盛り上がり、同じく’70年の『セルフポートレイト』で意気投合したばかりだったからです。詳細はO氏のブログ<mo'fablog!>をご覧下さい。登場するHさんという怪しい人物、実はぼくです。

新しい夜明け(紙ジャケット仕様)

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