バタフライ・チェア

osamuharada2005-12-19

60年代のアメリカ文化に憧憬していた頃から、欲しいなあと思っていたモノの一つに、この通称バタフライ・チェアという簡便なアウトドア用の椅子がありました。よくアメリカの中流家庭の庭やプールサイドに置かれている大量生産品です。誰がデザインしたものなのかは不明ですが、メーカーによって若干の差はあるもののだいたい同じ形です。鉄のパイプに帆布をかぶせただけのものです。15年ほど前にアメリカのリビング雑誌の小さな広告で見つけて、ニューヨークの知人に頼んで買って送ってもらいました。梱包を開けたら、まだこんなのを作っていたんだという驚きと懐かしさで嬉しくなりました。大衆品だから一脚150ドルと値段も安い。箱のデザインすら昔のままでそっけない良さが残っていました。黄色、青、黒、赤、茶色と替えの布も同時に買いました。
夏は椰子の木陰に置くとピッタリです。そして冬(この写真)はアトリエ内に置いて日向ぼっこ専用になります。音楽を聴く時は両スピーカーのリスニングポイントを探して移動させるのに軽くて便利です。鮮やかだった黄色も褪せてきましたが、それでも使い込むと愛着が湧いてくるもんですね。
37年も前の話、初めてニューヨークへ行った時、わが師である川端実先生のご自宅、古い低層アパートの屋上テラスにも黄色いバタフライ・チェアが置いてありました。ぼくはそこの裏のアパートに住みついていたので、時々先生夫妻に留守番を仰せつかると、飼い犬のコリー、ジョージと一緒にテラスに出て、そのバタフライ・チェアに座り、周囲のいかにもニューヨークらしい景色を眺めたことなども、この椅子にまつわる懐かしき思い出です。