ベベール

osamuharada2005-06-19

十代の頃、フランス映画好きになって、古きはルイ・ジューヴェからジェラール・フィリップの映画や、当世流行ヌーべルバーグあれこれ、『アイドルを探せ』のような青春娯楽映画にいたるまで、なんでも手当たり次第に観ていました。なかんづく可愛い路線においては、ジャック・タチの『ぼくの伯父さん』、ルイ・マルの『地下鉄のザジ』にとどめを刺して、さて3番手というのが、’63年『わんぱく旋風』でした。これがついにDVD化されたので勝手に宣伝。前作『わんぱく戦争』の方は、子供達の世界が中心なので、どうしても子供向けでしたが、こっちは大人の視点から、いたずら小僧のベベール君を見せているので好きなのです。というより当時フランスかぶれだったぼくは、映画の前半にPARISのデパート「サマリテーヌ」のシークエンスだけで感動していたフシがあります。今見てもこの時代のサマリテーヌに行って一日中買い物していたい。またこれは卓越した名バイプレーヤー達が勢ぞろいの映画で、後に『Mr.レディ Mr.マダム』で超絶オカマ演技のミシェル・セローなどは、正統派フランスコメディの芸達者だったことがわかります。ベベールを小突き回し邪魔扱いにする兄貴役(『赤と青のブルース』の)ジャック・イジュランもゆるーくていい味をだしてます。それで弟ベベールのくちばしをとんがらす演技が、いやまして可愛くなってゆきます。前作『わんぱく戦争』ではワインに酔う自然な演技も凄かった。しかし、もしこれが演技だとするなら、この子は一体いつどこでスタニスラフスキー・システムを学びたるやという疑問が生じるくらい。いまだかつてこんなに可愛い酔っ払いは見たこと無い。ところでこの『わんぱく旋風』(この邦題はひどい『ベベールと各駅停車』でいいじゃないか)の監督はおよそ凡庸たる才能の持ち主なりき。ザジのパクリや、タチのもじりにもほとんど失敗をしてしまう。ところが全体にわたって元気でノンキな調子は、観ていていいかげんなところが気持が良く、あの頃はいい時代だったんだなあと懐かしさがこみ上げてくるのです。南仏の海岸をただ撮っただけのタイトルもたまらなく洒脱で、モノクロームの映像が実に美しい。父親の「ベベール!」と怒鳴る声の直後、ベベールのタイトル文字があらわれる編集のうまさ。配する文字のレイアウトは完璧。パレットクラブ「映画タイトル同好会」会長でもあるぼくは、さっそくこのタイトルも大切なコレクションに加えました。後で気付いたのは、同じく名子役マコーレー・カルキン君の傑作『ホーム・アローン』はこの映画のリメイクだったということです。さすがハリウッド映画、よく古典を勉強しているもんですね。またこの映画は、最近カフェなどで人気沸騰、サヴィニャックのポスターでも有名ですよね。ザジに続いて、PARISと可愛い好きのアナタに、是非オススメです。

わんぱく旋風 [DVD]

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