スペイン陶器

osamuharada2005-06-15

今日発売の、雑誌BRUTUS「好きな器」特集のなかに、何故かぼく(ほんとに何故ぼくが?)の愛用食器が掲載されています。そこでは英国スリップウェアと島根県の湯町焼を紹介しました。このブログで前に書いた卵用ココットもちょこっと出演していますよ。ぼくの器を選ぶ基準は、飲食するものに食器が似合っているかどうかということなので、好きな食物のほうが最優先です。ブルータスに載ってる大きい方の厚手の皿は、主に日本の洋食と呼ばれるトンカツ、ビフカツ、コロッケ、カキフライ、カツサンドなどに用いています。大皿の鉄釉こげ茶色、赤土色、黄土色、ガレナ釉の黄色などが、こんがり揚げ物の色合いをいっそう旨そうに引き立ててくれます。中濃ソースにも、山盛りの千切りキャベツのうすい黄緑色にもピッタリきます。とまあ、ただそれだけの話なのですが。
上の写真は、やはり洋食用にあれこれ集まってきた、ちょっと古いスペイン陶器のなかの、ボールとソーサーです。これはいつも夏の朝になるとぼくの定番メニューになる、ガスパチョ(トマト、玉ねぎ、きゅうり、ニンニク、レモン、パンに酢とオリーブ油などで作る冷たいスープ)専用です。この緑と鉄釉のアラベスク模様の器に、一晩冷やしておいた赤くドロっとしたガスパチョは、これ以上無いくらい完璧に決まるのであります。同じ南スペインの田舎料理だからアタリマエと言えば当たり前なのですね。陶器もスペイン南部アンダルシア地方、最後までキリスト教化に抵抗したイスラムの人たちの所産です。グラナダバレンシアセビリアと、若い頃にその地方をのんびりと旅して、パティオ(中庭)の白い漆喰とアラベスクのタイル、テラコッタの陶器とスペイン瓦などに魅せられました。ヨハン・シュトラウスのワルツ「南国の薔薇」を聴くと、どういうわけか勝手にイメージして、そのパティオの光景が目に浮かんできます。夏の強い陽射しと、中庭の静かで涼やかな日影が生みだすコントラスト。そして(何故かここで)おお、冷たきガスパチョよ!となるのでした。