ウィルマ・フリントストーン

osamuharada2005-05-15

高校生の頃、ハンナ&バーベラのTV漫画に夢中になったことがあります。正確にはそのカートゥーンの絵の描き方やタッチに、すっかりハマりました。その時にはいつか自分がキャラクター屋になるとは思いませんでしたから、神ならぬ身の、何が役に立つか先のことは、知る由もないものなのですね。なかでも当時の日本語タイトルで「恐妻天国」という大人向けマンガのシリーズが好きでした。後の「原始家族フリントストーン」のことです。その頃は、主人公フレッドとウィルマ夫婦はまだ新婚時代で子供はいませんでした。ロングヒットして子供キャラクターができたら、絵のスタイルが子供だけ描き手が違ってしまって、ぜんぜん可愛くないのです。ともあれ最初の頃の絵(’60年代初期のわずか2,3年の間)は人物、動物(ディノという恐竜のペットもいて)のキャラクターの描き方は最高でした。また背景の絵を描くスタッフも粒よりで、平面的で明るくアッサリとしたタッチが良く、風景やモノの形のディフォルメが見事でした。雲の描き方などは、今でもぼくのイラストでは借用したままです。特にウィルマという、もとはお嬢さん育ちの奥さんキャラクターが好きで、縦長の楕円形の目がチャーミングで特に好きでした。やがて楕円形の目を、オサムグッズのキャラクターに取り入れたわけですが、楕円が縦長すぎると年長に見え、丸にちかい楕円は子供っぽくなることに気づき、年齢差のコツを後々習得いたしました。またフレッドの目は白と黒目に分かれていて喜怒哀楽の表現が強く出ます、親友バーニーの目は八の字まぶたの下の小さな丸点で情けない感じ、というように目の描き方で性格を描き分けているのです。つまりキャラクターで大切なのは、まず目玉という事になります。ハンナ・バーベラで他に好きなのは、やはり’62年の絵がいい頃にTV用短編につくられた「リッピー・ザ・ライオン」シリーズ。これは元気のいいオッサン風のライオンと、いつも困った顔のハイエナ、ハーディー・ハー・ハーという名コンビの話です。ライオンとハイエナが仲良しというところがニクイですよね。ここではライオンの目が恐妻天国フレッドと同じで、しょぼくれたハイエナのほうが情けないバーニーと同じ目の描き方です。
ついでながら、オサムグッズ初期の目の描き方は Sliced Eye(パイなどをスライスしたような形)と呼ばれる、三角の切れめが入った楕円形でした。これは最も古いアメリカのアニメーションの描法でした。これだと幼い子供の表情しか描けないという難点があったため、途中から大人のウィルマの細い楕円形を取り入れたようなわけです。どうでもいい話でしたが、かくして、ウィルマはぼくのインスピレーションの源泉なのでした。写真は愛用のウィルマのグラス。これでいつも牛乳飲んでます。