イームズの椅子

osamuharada2005-05-24

20年前、島にアトリエを建てた時に、椅子やテーブルはすべてイームズのデザインにしました。その当時、イームズはすっかり過去のデザイナーとして忘れられていた頃で、青山にあったハーマンミラー社のショールームで、若い頃から憧れていたイームズ・デザインを目の当たりにして、ちょっと興奮しました。さっそくシェルチェアーを注文をするのに張り地を選ぶ段になったら、用意されていたものは少なくて、しかも日本人好みで、暗い地味な色の布やビニールレザーばかりでした。それでもしつこく他の色はないかと食い下がっていたら、たまたま通りかかった他の担当者が、それならどこかの大量注文の椅子用(イームズではない)で余っているビニールがあるかもと言ってくれたのでした。それでやっと好きな色にめぐり会えたようなわけです。ウルトラマリンブルーとビリジアングリーン、それにレモンイエローでした。偶然とはいえ自分の好きな色ばかりとは、残りものに福ありですね。そのうち2つがこの写真。後から居間用に2m余りのテーブルを自分でデザインするのに、テーブルトップの高さをこの椅子の座高に合わせたので、テーブルとしてはかなり低めです。でもこの高さは落ち着きます。うすい黄色の天板は、フォーマイカというアメリカのメラミン樹脂を合板の上に張ったものです。たかが椅子でも、長年飽きることなく座り続けていると、自然に愛着が湧いてくるもんですね。いいデザインというのは飽きの来ないものなり、と一人で納得していたら、いつしか世間はイームズのブームが若い人の間で起こり、大流行したと思ったら、あっという間に飽きられたりでビックリさせられました。世の中は忙しいもんなんですね。後年、パレットクラブ・スクールを造った時に生徒さん用椅子の60客を、イームズのスタッキング・チェアにしようと考えて注文に行ったら、ハーマンミラー社では樹脂のシェルチェアーは、すべて半年後には製造中止になるとのことでした。また偶然、ぎりぎりに運良く間に合ったのでした。「オサムグッズスタイル」65頁の小冊子の表紙は、台所に置いたイームズの食卓用のプライウッド・チェアです。これは14年前のイームズ特集の号でした。