新緑

osamuharada2005-05-12

一年を通じて、ぼくには最も好きな季節がやってきました。これから梅雨に入る寸前までの、若葉の頃が気持よくて大好きです。こんな時に島の自然の真っ只中にいると、何もしないで、何がなくても、何時間でも充足して楽しむことができます。音楽はそよ風と小鳥のさえずりだけで充分です。瑞々しい新緑と、澄み渡った青空を見上げていれば、絵や映像がなくとも目が勝手に喜んでいます。写真の2階の和室は、この楽しみだけのために、窓の大ガラスや葭戸がすべて戸袋に収められるように自分で設計しました。これはモダン数奇屋の建築家、吉田五十八スタイルを真似しちゃったものでした。実際にこの部屋に座してみると、部屋と外を仕切るモノが全く無くなってしまうので、自分が家に居るのか、外に居るのかという自覚が消滅してしまいます。部屋を意識しない部屋に変わるのです。やっぱり吉田五十八は偉いぞ!といつも感心してしまいます。そして外側は人工の庭ではなく、遠く向こうの山まで自然のままを借景です。杉やマキ、サカキ、山桜に椿など。卯の花に似たイズサとこっちでは呼んでいる、オオバエゴノキの白い花は島中に咲いていて、今のシーズン、見ものになっています。ぼくのさらなる楽しみは、この頃に出始める新茶を喫することです。煎茶ファンには待ち遠しかった季節到来でもあるわけです。目に映る若葉をそのまま飲んでいるような、爽やかなる味覚で、心の中まで清々しい気分になりますよ。それから琉球畳にゴロンと横になって、久保田万太郎の俳句を読む、吉井勇の短歌を読む。眠くなったら無印で買ってきたイグサの枕は昼寝に最適。時間はゆっくりと過ぎてゆきます。これでは、ただの老人というわけですが、ぼくは若い頃から老人趣味に憧れていたような変な若者でしたから、Just in Time ! いよいよもってオイボレて、ついに思う存分、老人ライフスタイルを楽しむことができるぞと、結構、若々しく燃えているのであります。この見渡す限りの、新緑のような気分でしょうか。