ココット

osamuharada2005-04-21

この小さな卵用ココットは、島根県湯町窯で昔からつくられています。英国のスリップウェアーの手法を日本に取り込んでいるので、どこか洋風の感じがする民芸窯です。ぼくは子供の頃からこれで半熟の卵を食べるのが大好きでした。じかに弱火にかけて、まわりが白くなりかかったところで火を止め、後は余熱で黄身が半熟になるのを待ちます。塩を少々振り、熱々のところをスプーンですくって食べます。島のアトリエにいる時はほとんど自炊なので、今もおおいにこのココットを活用しています。島のほうれん草や、庭に勝手に生えているアシタバなどを摘んできて、下に敷き、上から地卵を入れて蒸し焼きにしたり、とちょっと工夫したりもしています。材料さえ良ければ、旨くてしかも簡単な卵料理ですよ。これはパンにもゴハンにもよく合います。
ぼくの子供の頃(昭和30年代)は、東京でも民芸のブームがあった頃で、よく爺さん婆さんに連れられて、箱根の「木賀の里」という温泉宿へ泊まると、朝には決まってこのココットで卵が出ました。その頃は、ぼくのおふくろもすっかり民芸づいてしまったのか、諸国民芸品店の草分け、銀座「たくみ」で食器やら布製品あれこれを買いあさり(昔は民芸という名の通り安かったので)、我が家にも民芸ブームがおこりました。なので、このココットで食べる卵は、ぼくには懐かしい「おふくろの味」でもあるわけです。写真のは大きい方で、卵だけなら2個入ります、それとこれより小ぶりの1個用もあって、ぼくは両方、愛用しています。湯町窯の英国ガレナ釉を模したこの黄色が、またぼくは好きだということも手伝って、いつまでも飽きのこない理由でもあります。この色って食欲が湧いてくる色だと思いませんか?現在でも銀座「たくみ」では定番商品になって売っています。

銀座たくみ http://www.ginza-takumi.co.jp/