銀座・はち巻岡田

osamuharada2005-01-26

昨夜は久しぶりに、美術学校時代からの親友二人と会って、寒いので松屋の裏の「はち巻岡田」の名物鮟鱇鍋で飲む。燗酒は香りゆかしき樽の菊正。ぼくの冬の好物はなまこです。それに牡蠣の土手焼き。戦後の銀座は関西割烹に侵略されてしまって、現在唯一の東京の小料理屋さんは「はち巻岡田」だけになってしまったのでした。かつては歌舞伎や新派の役者に久保田万太郎をはじめとする文壇仲間が贔屓の店でした。その扁額や暖簾の寄せ書きが今も残って、この店を見守ってくれているようで、いつ来てもぼくはほっとするのです。
三人の話題は、お互いの近況報告の後、銀座の街のこの頃の変貌ぶりから、昔の東京の思い出話へと。詩人でもある女友達の着ていたきものは、おばあちゃん譲りの大島紬、大きな亀甲柄がよく似合う。もう一人はロンドンで服飾デザインをしていた友達、自らデザインしたスーツはオール・カシミアでなんとも品がいい。思わず写真撮らせろと言って写したのがこの写真。シャツ、ネクタイにポケットチーフ、カフスボタンにいたるまですべて自前デザインなのです。彼は十代からの遊び友達だったけれど、お洒落にかけては若い頃から完璧だった。そしていまだに商売はへたで、男物女物に限らず自分の好きな服しか作らない。いかにも東京ッコの感じがそのままなんで、なんともおかしくて嬉しいトシのとりかたをしている。
店を出て三人で歩く、海外ブランド店軒並みの銀座通り、ブランドといったってぜーんぶ同じ株主なんだろと言うと、今は上海のが凄いぜ、特にジャディーンだよ。やっぱりそうか、昔の中国でアヘン戦争を企画して、日本では長崎のグラバーを子分に使って明治維新までプロデュースした。そして現在この軒並みブランドの持ち株会社も同じくジャディーン&マセソン社とは、はてさて情けなやと、今度は銀座の悪口が続く。雨が降ってきたので地下のBARで飲んでから散会。持つべきものは古き友。