岸恵子

30年の物語 (講談社文庫)

30年の物語 (講談社文庫)

子供の頃から憧れの女優、岸恵子のロングインタビュー(BS朝日)を見る。70を過ぎてなお毅然としていて、しかもほんとに美しい。『君の名は』のヒロイン役が嫌いだった話から、日本とフランス両国籍を持つ人としての世界観、現代日本批判。どれもこれも歯に衣着せぬ話っぷりで小気味良い。なかでも今の日本及び日本人を評して「こどもの国」と言ったり、あまりに感情的な国民性を指摘するなど、辛辣でいてしかも爽やか。それはいつもぼくが感じてることとほとんど同じだったので嬉しくなって、いよいよ岸恵子ファンになってしまいました。
映画女優としての岸恵子では、小津安二郎監督『早春』(1956年)がぼくのベストワンです。主役ではなく不倫相手の脇役だけれど美しく輝いていて、観るたびに、ぼくが池部良だったら淡島千景なんか振って、「金魚」と言うあだ名のついた役の岸恵子と絶対カケオチしてやるのになあ、といつも無念な気持ちになります。映画であることなんかすっかり忘れて本気ですね。あんまり観ていてそこまで感情移入してしまうことって無いほうなんですよ。日本女優では他にいません(外国女優には沢山有り)。不思議なことに岸恵子は、そんな古い映画に出演している姿を今見ても、昔の人って感じが全然しません、モダンの人なのです。コスモポリタン的美人ということでしょうか。ますますいいな。
早春 [VHS]

早春 [VHS]