水丸さんの犬嫌い

osamuharada2014-05-01

くだんの「水丸グッズ」続き : これはぼくの娘が愛用の水丸印トートバッグ。娘は小学生の頃から、この水丸おじちゃんの犬バッグが大好きで、やはり今でも現役で使っているそうです。もうひとつの、東京タワーの〈みやげ物〉というモチーフも水丸さんのオハコで、昔から変わらなかったんだな。
犬が大嫌いだった安西水丸さん。かつてニューヨーク、東京、京都でも一緒に並んで歩いていたことがあったが、前方向にちらっとでも犬の姿を見つけるやいなや、水丸さんはパッとどこかへ消えてしまう。振り向いても、もういない。毎度のことながら、逃げ足の速いこと。とにかく犬が怖いのだそうだ。 あるとき水丸さん、部屋に赤いチューリップを飾っていたが、じっと眺めているうちに、突然あの一枚の赤い花びらが、犬の舌ベロに見えてきたので怖くなって捨てちゃったんだよという。それほど犬嫌いなのに、どうしてこんなに可愛らしく犬を描けるのか、プロの立場で質問をしてみた。水丸先輩いわく、恐怖を克服するためには何でも絵に描いてしまえば打ち勝てるのだ。と解ったようで解らない答えが返ってきた。
犬についで猫もダメだった。昔ぼくにはシャケちゃんという人なつこい飼い猫がいて、すぐお客さんの膝の上に飛び乗ってはゴロゴロといってくつろいだ。水丸さんもこれをやられて「ワーッ!」と叫び、両腕を上げる降参のポーズのまま硬直してしまったことがあった。椅子に座っているので逃げ場がない。ただちにシャケちゃんを押入れに閉じ込めたが、猫にしてみればさぞ傷ついたことだったろう。それにしても、犬も猫も大っ嫌いな水丸さんをして何故あんなに愛くるしい犬猫を描くことができ得たのか? いまだに謎をぼくに残したまま、水丸さんはどこかへ消えてしまった。