食べものノート

osamuharada2011-09-16

東京に帰って真っ先に行ったのは、銀座の【はち巻岡田】でした。刺身、岡田茶碗、実そば、あいがも、粟麩田楽など東京の味覚。それに久保田万太郎の季節の句が壁に掛かっていたので、東京へ戻った気がした。時差ボケがなおらない次の日は、銀座松屋【茶の葉】で鹿児島県大隅半島の煎茶「有明」を喫す。銀座【天一】で琵琶湖の鮎の天ぷらなど、シメに小柱と海老のかき揚げ丼を食す。外に出れば、夜の節電銀座のうす暗さには、どうにも馴染むことができない。人通りは少なく、二十年前のバブル崩壊直後の銀座を思い出した。
パリにいて、これは日本じゃなかなか味わえないな、と感心したのが意外にもパンでした。あちこち新進気鋭のパン職人がつくるBoulangerieにて、焼きたてのバゲットやバタールを買っては食べくらべてみた。どこの店にも伝統と個性があり、それぞれがいちいち感動的にうまいのには驚いた。市場で売っていたバターがまた実にうまい。これに惣菜屋のパテ・ド・カンパーニュと、BIOの八百屋のチコリ、そして白ワインがあればゆうことなし。基本のパンさえうまければ、すべてはC’est bon!なのだ。日本の「ご飯」と同じことですね。安上りでしかも大満足できちゃう。
フランスの牛肉は、赤身のみで、日本のような霜降り肉は無い。赤身といっても、人形町【日山】の絶品ヒレ肉のようなわけにはいかない。素材そのものでは勝負できないから、料理が発達したのはよくわかる。鴨料理が好きだけれど、残念ながら夏なのでパスした。
フランスでは牛より豚が旨いと思った。豚料理で評判の【 Le Comptoir 】へ行ってみた。ビストロらしく単純な料理で、豚の旨味がよく引き出されていた。牛と同じで脂身が少ないから、日本のトンカツには向かないな。ワインにピッタリ合うところは、さすがフランスの豚。写真は店のワイングラスです。
フランス菓子の砂糖甘いのには閉口した。だいいちデカすぎるね。本格的ショコラもちょっとヘビーだし、レストランのデザートは苦しくてもう入らない。酒飲みではないからクセのあるチーズもいらない。牛乳は特にうまいとは思わなかったけれど、ヨーグルトは種類も豊富で食後にもイケた。果物はしっかりと味が濃い。総じてフランスこそは食の大国だと改めて思ったが、もはやこのトシではついてゆけない。グルメは四十代の頃に充分楽しんだから、もういいか。
おとつい、南仏で核施設が爆発したという。サルコジは、放射能漏れがあったとしても、平気で隠蔽しそうな顔ツキをしているな。これからは世界中どこへ行っても、食の放射能汚染からは逃げられないのだろう。