Le Cargo Noir

osamuharada2008-12-29

今年もまた、コラージュやアブストラクトを描いて遊んでいたのですが、9月のリーマンショックから始まった世界恐慌が気になりだして、コレは脳天気に絵なんか描いてる時代じゃないぞ、などとコンスピラシー・セオリストとしては落ちつかなくなってきました。 しかしそのうち、古い招待状(id:osamuharada:20081028)を書いたところ、昔の自分の絵が、Raoul Dufy の「黒い貨物船」という絵にインスパイアされていたことを思い出して、秋にこの写真左のようなアブストラクトをいくつか描きました。 第二次世界大戦中の不穏な時代に、デュフィの明るい海の絵のなかに影を落としたものは、戦時中の物資を運ぶ黒い貨物船でした。デュフィは何度もこのテーマを描いていたようです。前に(id:osamuharada:20070731) のところでも書いたけれど、デュフィの絵のなかでも、ぼくの好きなテーマなのです。自分の絵に題名をつけたことなど他にはないのですが、唯一この Le Cargo Noir 黒い貨物船だけは、デュフィの顰(ひそみ)にならって、このテーマで時々描いていました。 いつもは幸福感に満ち満ちた絵を描くデュフィが、何故あの時代に、あの絵を描いたのかが、ヘタでも自分なりに描いてみたらよく解かるのです。実はこれが楽しい!のであります。(ワカったようなワカらない話でスイマセン) 幸いぼくは職業画家ではないし、もちろん人に見せるためでもなく、ただ自分自身が見たくて描いている絵にすぎないのです。 ともあれこの時代だから、来年もまたこの黒い貨物船が、ぼくのキャンバスの上を就航しそうです。というプライベートなほうでの、美術の一年でした。