海久保と茶碗

osamuharada2008-09-21

また煎茶の話でスイマセン。 舩木伸児さんの最新作イッチンの湯呑を見て、これなら「海久保」という古い在来種の煎茶の味にピッタリあうだろうという予感が的中した。それで嬉しかったなという話。 煎茶には磁器の染付けがいいというのは、それが江戸後期から明治の文人趣味的煎茶にはあうからで、ソフィスケートされた風味の茶葉にこそ磁器製の茶碗はあう。 しかし海久保という茶はそれよりもずっと古く、明時代の中国から渡ってきた禅宗の僧侶たちが伝えた、昔のタイプの煎茶なのでしょう。静岡赤石山麓で、古来からの自然農法によってつくられた茶葉です。尾形乾山の煎茶茶碗などに、磁器ではなく陶製が多いのは、江戸初期の頃の煎茶の味覚に準じたデザインだったからだと思われます。陶磁器の発達は飲食の発展に関連しているはず。  舩木さんのイッチンの、新作ペイズリー柄のコップ型茶碗は、乾山がヨーロッパの陶器に倣って作陶した煎茶茶碗にも似て、モダンでありながら枯淡な味わいを併せ持っています。これぞ「今人古心」というものでしょうか。サイズも小ぶりで煎茶にちょうどいい。というワケで、いままで好きな海久保にあう陶器の湯呑茶碗を持っていなかったから、これは最近思いがけず嬉しいことでした。
また自然農法の野趣に富んだ海久保の茶請けには、縄文時代から栽培もして食していた日本の栗。これがまた見事にあうんですよ。滋味風味の相性がすごくいい。栗は縄文土器と同じことで、土鍋で蒸すと糖度が通常の2倍にもなる、と「ためしてガッテン」で実証されていましたね。さて栗も舩木さんのスリップウェアーが似合います。 菓子が砂糖で甘すぎるから渋い茶で中和するというような、ただの流行スイーツ好きの人には、余計な話でオタイクツさま。
前に書いた舩木さんのこと。 [id:osamuharada:20080416]