島の桜

osamuharada2008-04-02

アトリエ3階の窓から外をぐるりと見渡すと、若草色の中に白い霞がかかったように咲いている、島の桜が満開だった。この開放感はデジカメではうまく撮れない。遠く山裾のほうまで、霞が棚引いている感じで、例によって江戸の古浄瑠璃「河東節」を聴きたくなる。毎年これはぼくの花見の定番曲で、「 春がすみ  たてるや いずこ  みよしのの・・」と助六の出端のところでウットリ。畳の部屋に引越してこれを聴く。そして朝の煎茶の時間、もちろん茶ウケは桜餅でした。
午後から、あまり気持が良い天気なので、桜の木の下を歩きたくなって、2時間も散歩をしてしまった。すっかりトシヨリ・モードに入っていますよ。 歩くと下から見上げる満開の桜は、花が若葉と一緒に咲くせいか野趣に富んで、上からの眺めとは違った印象がした。他の木の若葉と一緒になって、春の気が匂いたつようだ。かすかに桜餅の桜の葉と同じ香りがただよっていた。
明治の頃、都会に栽植されだして、一般的になったあのピンクの「染井吉野」は、豊島区染井の植木屋さんでつくられたそうで、エドヒガンとオオシマザクラの交配種(種のできないクローンなので挿木で増やす)ですね。 散歩の途中で撮った写真が、染井吉野の元となった島に自生のオオシマザクラ。伊豆諸島と相模湾周辺に分布する準固有種で、カスミザクラが母系といわれ、かなり古い種類のサクラのようです。実は桜餅の葉には昔からこのオオシマザクラが使われているんですね。
さて午後もまた部屋からの花見をしようなぞと欲張って、桜色のロゼ・シャンパンを飲みながら、今度は映画 IL POSTINO のサントラ盤でキメてみました。霞のように連なる桜の向こうに、遠く青い海原を眺めながら聴いていると、同じトシヨリでも老いた詩人役のフィリップ・ノワレ気分になっちゃうよ。 映画のほうは話がイマイチだったけれど、先年亡くなったノワレと若いイタリア女優がいいな。フィリップ・ノワレといえば大昔の「地下鉄のザジ」でのオジサン役が一番好きだ。ともあれこの「イル・ポスティーノ」サントラは格別に気持がいいのです。これも花見の定番曲入り。