夏の煎茶

osamuharada2005-06-25

梅雨だというのに、毎日暑いですね。新茶シーズンもいよいよ終わる頃ですが、5月に南から順に北上してくる各地の新茶を、今年も楽しませてもらいました。銀座松屋の「茶の葉」さんで、いつも買っている静岡県小笠郡の「小笠」(みる芽作り)も、今年の新茶ではことのほか若々しさがあって、ただでさえ爽やかで柔らかな味は、それに加えて蕉風俳諧でいう「軽み」を感ぜしめ、清涼感を絵に描いたごとき味覚でした。さらにそれから8種くらい飲んだなかでは、静岡県赤石山麓で摘まれた自然農法の「海久保」には驚きました。大自然の力強さ、山や土や霧や雨や太陽の恵みそのものです。100g飲んだところで、あまりに美味いので、すぐまた買いに行ってお店の人に思わず感想を言ったところ、この2,3年ちょっと元気のなかった「海久保」が、今年はほんとにまさに力のある良いできなんですよと、我が事のように喜んでいました。お茶にもヴィンテージがあるんですね。あれからまた今日も、そろそろシーズン最後の新茶を何か、と買ってきたらまたビックリ、今度はやはり自然農法の「宇治童仙房」(京都府相楽郡です)の新茶(生仕上げ)がとても美味い。もとより宇治はまろやかなのが、よりまろやかで、一言これは何とも可愛い味、としか表現できません。可愛い研究家としては、お茶にも可愛いがあるとは、不覚にも思い当たらなかったのであります。普通、宇治の新茶だけは、これからゆっくり寝かして9月頃から新茶としてお店にやって来ます。
ぼくは一年を通じて毎日の煎茶飲みですが、いつもの日本の染付け茶碗も、夏には気分を変えて、上の写真のような19世紀頃の英国のティーカップを使ってみたりします。この茶碗に描いてある絵は、片面に旅の途中の若者が木陰で犬と休憩する図、反対側にはその若いのが貴婦人の庭のテーブルでお茶によばれている図柄で、どうも男が女を口説いているように見える。内側上部には野薔薇が描かれています。日本の染付けにある祥瑞、山水や赤壁賦の図柄に比べて、よく見ると気恥ずかしくなるような図柄ですが、畳のうえではなく、バーカウンターなどで使うと煎茶にも合う気がしてきます。茶碗に椰子の葉陰が映りこんでるところ(芸が細かい)が、ちょっと夏向きでしょ。湯町窯の耳の付いたスープ皿には、自然児「海久保」の新茶に合わせて、松屋の地下2階「正直村」で買った、素朴な土佐の芋けんぴと、沖縄黒糖のかりんとうを混ぜてます。このお茶、京菓子には全然合いません。煎茶趣味近況報告でした。