海泡石のパイプ

osamuharada2005-06-07

ぼくは20代半ば頃からのパイプ党です。もっとも若いのに生意気な奴と嫌われるので、決して外ではもちいませんでした。もっぱら一人で、イラスト稼業に追われるなかでの休憩時間に愛用してきました。ただパイプが最も美味い季節は秋なので、天気の良い一日であれば、ツイードのジャケットにマフラーを巻き、枯葉の道の散策にパイプは必需品でありました。さらに若い頃はキザなことに、いつもポケットに北園克衛の詩集を忍ばせて歩く(今思い出すと冷や汗)などという、人にはあまり知られたくない浪漫派パイプ党でありました。しかしいくらなんでもベレーなんかはかぶりませんよ、念のため。30代も同じような調子で過ごし、いよいよ不惑の40を過ぎし頃、もうどうだっていいだろうという気になって、人前はばからずパイプをふかすこと、解禁にさせてもらいました。そして50代、こんどはパイプ道具一式をわざわざ持ち歩くことが面倒になってきて、またぞろ仕事場かアトリエでのみのヒマつぶし仕様になりました。またパイプが美味いのは、ステーキやシチューといった西洋肉料理の食後なので、トシとともに肉を食べなくなったいまや、パイプ回数もついでに減りました。日本の鮨や蕎麦の後などでのパイプはまったく美味くもなんともありません。やはり西洋のケーキとコーヒーの後なんかにはピッタリきます。ところでパイプというものは、一回使ったらすぐクリーナーで掃除をして、湿気を抜くため1週間は使わずに放置しておくものなのです。従って通常何本か持ってなくてはいけないという、ウレしい悲鳴の道具なのですね。で、ついあれこれデザインや材質にも凝るという、別のマニアックな楽しみがあるわけです。ぼくはだいたい喫煙具の老舗、銀座「菊水」という店で購入しています。品揃えは世界有数でしょう。店内は大人男子専用のクラブのような感じがします。写真のパイプは通常のブライア(木目の美しい根の部分)と違い、地中海で取れる白いメアシャム(海泡石)のパイプです。これはクール・スモーキング(軽い味)になるので、夏専用に使っています。他にも愛用しているトルコ産海泡石のものは、イスラミックの模様が彫刻してあるので、さらに夏の感じがするのです。白い色も夏には涼しげです。肝心の煙草の葉も、軽いバニラのフレーバーなどが良く合います。と、まあすべての女性にはどうでもいい話でしたね、お退屈様。