秋のアトリエ日記

osamuharada2014-10-29

穏やかな秋晴れの一日、読書しながら、ついうたた寝をしてしまった。こんなにトシヨリくさくなった自分を反省すべきか、と一瞬だけ忸怩たる思いもしたがすぐに忘れる。あまりにいい気分の目覚めだったので、窓外の青空や木々を見上げているうちに、富岡鉄斎のある扇面図を思い出した。さっそくアトリエから画集を出してきて、探すとすぐに見つかった。(この写真の扇面)
中国の故事の一句を入れた、元の禅僧・晦機の七言絶句。その結末を讃に、鉄斎は絵を描いた。扇面には【 人間万事塞翁馬  推枕軒中聴雨眠 】とある。絵は山中の草庵で寝ながら本を読む高士を描いている。
人間万事塞翁が馬】は、「人の〈禍福〉は予測ができない」という喩えによく使われる有名な故事。(Wikipediaにも出ていますね) その後に晦機は【 推枕軒中聴雨眠 】とつなげている。人には禍もあれば、その禍が福をもたらすこともある、予測はできない。「しかしそんな禍福などにこだわることなく、自分は山中に茅屋(推枕軒と名付けた)を結んで、雨を聴きながら独り毎日眠っている。」と続けています。
〈禍福〉は、ぼくの身の回りにも世間にもある。どちらかといえば、いまの世間のほうは禍ばかりのような気もしますが、これも「塞翁が馬」にすぎないのだと思い、諦観と楽観の間を揺らぎながら、ヤツガレも鉄斎や晦機に従い、昼寝をし、また起きてはアブストラクトを描いています。