吉野織の風呂敷

osamuharada2008-01-16

昨今は、ただのトートバッグだったものが、エコバッグと呼び名を改めたら売れているそうだ。エコが付かなきゃ売れない時代らしい。日本人には昔から風呂敷というエコバッグがあるじゃないか、と思うな。 これは室町時代からある吉野織を使った風呂敷です。ぼくの三十代の頃、神保町古書店街へ古本を買いに行く時の必携品。なにしろ本は重たい。半日も神保町にいると、欲しい書籍がいっぱい見つかって、どうしてもその日のうちに持ち帰りたくなるので、気がつくともの凄い重圧が腕にかかってくる。買い足すうちに、紙袋などは途中で破れて悲惨な目にもあうから、やがて大判の風呂敷を用いるようになったわけ。なかでも気に入ったのが「銀座たくみ」で調達した、吉野織のものでした。これは平織の織物に、タテ横両種の畦(アゼ)織を配して、縞や格子が織り込んであります。畦織の部分は真田紐のような感じで頑丈にできているのです。もとは茶道具を包むものなどに利用するため、中国や東南アジアから輸入していた織物でした。 風呂敷にも最適な布ですね。 古本を運ぶときは、本を立てずに寝かして積み上げ、風呂敷包みにすると沢山持ち歩けます。 その頃よく買っていた古本は、和洋の画集やら、青蛙房の函入りハードカバー本だの、永井荷風三田村鳶魚(えんぎょ)、円生全集などの重たいやつばかり、若かったので目いっぱい持てるだけ買って帰りました。あの頃が一番この吉野織風呂敷のお世話になったかな。 色目も好きで何色も買っておきました。枯葉色のツイード・ジャケットなど着ていて、この風呂敷包みを持っても、ぜんぜん違和感が無いのです。パイプをくわえていてもOKでした。男女兼用で持てるし、実に良くできていますよね。 最近はトシのせいで、重たい物を運ぶこともあまり無くなってはきたけれど、吉野織の座布団ガワのほうは、今でも愛用しています。これは畳とピタリ合うから不思議です。もちろん煎茶にもね。