日本のいちばん長い日

osamuharada2007-08-12

お盆休みTVで、また恒例のように終戦記念日番組が始まる。敗戦の十五日が、死者の霊をまつるお盆の日とは、何だかできすぎのような気がするな。戦争を描いた日本映画のなかで一番好きなのが、一昨年亡くなった岡本喜八監督’67年『日本のいちばん長い日』。八月十四日から十五日の皇居周辺で実際にあったといわれるクーデター事件を、ドキュメンタリー(風な)タッチで描いた、サスペンス映画の傑作です。ぼくは中学時代、岡本喜八の戦争西部劇のような’59年『独立愚連隊』、’60年『独立愚連隊西へ』にハマったのが最初で、これは大陸での戦争が荒唐無稽な娯楽アクション物になっていて、ハリウッド映画のようなカッコよさがあったのですが、はたちを過ぎて観た『日本のいちばん長い日』は、さらにそのクールな切れ味がグレードアップした感じがしたものです。しかもエンターテインメントとして成功している。日本映画の老練な俳優陣の演技力がいずれも凄くて、三船敏郎演じる阿南陸軍大臣、ぼくのゴヒイキ島田正吾の森近衛師団長、笠智衆の鈴木内閣総理大臣志村喬加東大介宮口精二と(七人の)サムライ達も素晴らしい。この事件の要で、阿南大臣の切腹、森師団長惨殺シーンの映像迫力は、黒澤明映画に近いかな。大義に生きる男を、一瞬のうちに演じきるかつての日本の俳優達。それを眺めるだけでも価値ありです。また、この14日、24時40分から、BS2で放映されるので、若い男性諸君には是非観ておいて欲しいです。

日本のいちばん長い日 [DVD]

日本のいちばん長い日 [DVD]

ただこの映画、最初からぼくには、若手俳優黒沢年男演じる畑中少佐の役どころが納得できなかった。この役者の芝居がクサイだけでなく、このキャラクターそのものにリアリティが全く感じられなかった。という古い記憶があったところで、今月出版されたばかりの本を読んでやっと納得です。この事件の暴かれた真相にはただただ驚愕しました。このクーデターが、実は偽装クーデターであって、はたしてそれを操る陰の存在と目的は・・・、これから先は推理小説と同じく結末を明かせられませんが、それが鬼塚英昭著『日本のいちばん醜い日』。著者は果敢にもタブーに挑戦して、ここにも男ありきです。コンスピラシーセオリストにとっては鹿島昇著作本と同じく重要な名著となるはず。発禁処分にならないうちお求めください。
日本のいちばん醜い日

日本のいちばん醜い日