お盆休みTVで、また恒例のように終戦記念日番組が始まる。敗戦の十五日が、死者の霊をまつるお盆の日とは、何だかできすぎのような気がするな。戦争を描いた日本映画のなかで一番好きなのが、一昨年亡くなった岡本喜八監督’67年『日本のいちばん長い日』。八月十四日から十五日の皇居周辺で実際にあったといわれるクーデター事件を、ドキュメンタリー(風な)タッチで描いた、サスペンス映画の傑作です。ぼくは中学時代、岡本喜八の戦争西部劇のような’59年『独立愚連隊』、’60年『独立愚連隊西へ』にハマったのが最初で、これは大陸での戦争が荒唐無稽な娯楽アクション物になっていて、ハリウッド映画のようなカッコよさがあったのですが、はたちを過ぎて観た『日本のいちばん長い日』は、さらにそのクールな切れ味がグレードアップした感じがしたものです。しかもエンターテインメントとして成功している。日本映画の老練な俳優陣の演技力がいずれも凄くて、三船敏郎演じる阿南陸軍大臣、ぼくのゴヒイキ島田正吾の森近衛師団長、笠智衆の鈴木内閣総理大臣。志村喬、加東大介、宮口精二と(七人の)サムライ達も素晴らしい。この事件の要で、阿南大臣の切腹、森師団長惨殺シーンの映像迫力は、黒澤明映画に近いかな。大義に生きる男を、一瞬のうちに演じきるかつての日本の俳優達。それを眺めるだけでも価値ありです。また、この14日、24時40分から、BS2で放映されるので、若い男性諸君には是非観ておいて欲しいです。
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