ハングルの絵本

osamuharada2011-02-08

二十六年前が初版で、現在もまだ版を重ねて続いている、ぼくの絵本『かさ』(福音館書店)。今年は海外版として、韓国でも刊行されました。描いた絵は同じだけれど、文のほうはハングルに翻訳されている。自分の名前までがハングル文字で書かれているので、むかし描いた絵本なのに、なぜだか新鮮に感じましたよ。この絵本が、韓国の子供たちに喜んでもらえることができたら、ほんとに嬉しいけれどなあ、とつくづく思うのです。
というのも、去年ちょっと気になるニュースがありました。韓国の海軍が、新しい潜水艦に【安重根】という名前をつけていたことです。今も南北朝鮮における反日の英雄として、国民的人気があるという「安重根」(アンチュングン、日本読みは、あんじゅうこん)。これには驚いた。なにしろ百年も前に旧満州ハルビン駅で、伊藤博文を暗殺して、処刑された朝鮮の独立運動家の名前なのですよ。 言うまでもなく伊藤は、明治日本の初代総理大臣で、朝鮮を日本の植民地にした張本人。
韓国では、深い怒りをあらわす朝鮮語の「恨」(ハン)を、今のいまでも日本に対して持ち続けているわけですね。一昨年は、韓国の富川市に、「安重根」の大きな銅像が建った。伊藤博文を暗殺した日から数えて、ちょうど百周年の記念日だそうだ。韓国の総理も参列していたが、日本では報道されなかったようだ。WEBの映像で見てショックだったのは、その除幕式に、子供たちの合唱団が「安重根」讃歌を高らかに歌っている場面だった。韓国の大人たちは、過去の日本への「恨」を、今も子供たちに伝えている。
出版社から送られてきたばかりの、ハングルの絵本をボンヤリ眺めていたら、絵本のことなどより、あの子供たちが朝鮮語(韓国と北朝鮮の国語)で合唱していた光景をふと思い出し、なんとも切なくなってきましたよ。