六人の暗殺者

osamuharada2007-03-15

坂本龍馬暗殺を描いた映画は数多くあるけれど、1954年日活作品『六人の暗殺者』は、ぼくにとって特別な想いある大好きな映画です。監督の滝沢英輔は、ぼくの大叔父、つまり祖父の弟でした。祖父もまた二川文太郎という映画監督で、兄弟が揃って映画監督なのでした。そしてこの映画に登場する俳優陣は、この頃が全盛期だった新国劇総出演。なかでも子供の頃からぼくの贔屓の俳優、島田正吾が主演。島田と新国劇の双璧といわれた辰巳柳太郎が、ここでは重要な脇役を努めていて、物語の終盤近く二人の壮絶な立ち回りのシークエンスは、何度見ても素晴らしい。前半で暗殺される龍馬を演じたのは、劇団民芸の重鎮、滝沢修。脚本の菊島隆三は、黒澤明の 『野良犬』 『用心棒』 『椿三十郎』 も書いています。
この映画の面白さの骨子は、何より「龍馬暗殺事件」の犯人探しというミステリーにあるでしょう。先日もNHKで、真犯人説をテーマに謎解き番組をやっていましたが、あいも変わらず新撰組京都見廻組かという陳腐な回答でした。『六人の暗殺者』ではより考え抜かれた新説(これから見られる方のために秘す)が出てきます。しかもこれは実に良くできたフィクションであって、グイグイ物語に引きずり込まれて、十代の頃はじめて京橋のフィルムライブラリーで見たときには感動したものです。というような下地があったせいか、最近になって、ぼくも龍馬暗殺の真犯人を自分なりに突き止めようと、もともと推理小説好きなので、資料を集め情況証拠をかため、ついに(自分だけ)納得がゆく真犯人を割り出したのですが、これは危険で口外できないのです。コンスピラシー・セオリストの人だけにはそっとお教えしてもいい。それにしても、あの司馬遼太郎の大衆小説『竜馬がゆく』の長々としたフィクションは、肝心の暗殺の手前で話が終わってしまって、お茶を濁しているところがどうもインチキ臭くて、消化不良を起こすのです。だいいち龍馬像があれではまるでマンガなのですよ。余計なことをいって司馬竜馬ファンの方ゴメンなさい。
明日16日午後3時より、京橋の国立近代美術館フィルムセンターにて『六人の暗殺者』が上映されます。ビデオでも何度も見ているけれど、やっぱりスクリーンで、また見てくるつもりです。
フィルムセンターhttp://www.momat.go.jp/fc.html
3月16日追記 見てきました。傷一つないオリジナルフィルムの映像が美しかったのは、さすがフィルムセンター。何度見ても好きな映画です。利己を捨て、大義に生きる男の清々しさが見事に描かれています。自分のことにしか興味のない現代男には、まったく理解できない映画でしょうね。