チャイナドレス

osamuharada2005-05-28

ぼくは現実のファッションとなると、まったく興味を持たない普通のオヤジなのですが、こと映画のコスチューム・デザインになるってぇーと、これがちょいとウルサイ。最近では香港のウィリアム・チャンというひとの衣装デザインに胸をときめかしています。ウォン・カーウァイ監督映画の美術・編集・衣装の常連スタッフです。なかでも『花様年華』がいい。恋愛映画嫌いのぼくがたまたま観たのは、娘が大のトニー・レオン贔屓で、見なヨォと勧められたからでしたが、俳優もストーリーもそっちのけで、マギー・チャンの着ている、その衣装の素晴らしさにすっかり圧倒されてしまいました。20種類は着替えたのでしょうか、すべて体にピッタリした、カラーの高いチャイナドレスばかりで出てくるのです。上の写真のようなプリント柄(多分50年代ヴィンテージのテキスタイルを使用)や、シックな絹の光沢を生かしたもの、夏のジョ−ゼット、唐桟縞のような平織り、ツィード風の粗織り。大胆なものから渋いもの、次から次ぎへと目くるめく思いのチャイナドレス揃い踏み。現実離れしているけれど、この衣装の醸し出すむかしの香港、中国の雰囲気が、映画の夢幻的なムードを決定付けています。おかげで何度見ても筋がわからない、というか話なんかどうでも良くなっちゃう。なので、この続編ともいうべき新作『2046』も同じウィリアム・チャン担当の衣装に目が釘付けとあいなりました。今度は奇跡的な美人女優に成長したチャン・ツィイーが、あれこれまたチャイナドレスを着まくるというのですから、これはもうタマラン。マギー・チャンの人妻役衣装(浮世絵なら鈴木春信風)と違って、チャン・ツィイーにはなんと高級娼婦の衣装(こっちは歌川国貞)で、スパンコールやビーズにラメ、手のこんだ中国刺繍などなど、中国式の粋というのはこういうことかと感動。美的に、非常に爛熟したコスチュームばかりなのです。ほんとにホレボレしました。そしてつくづく思うのは、やはり中国の民族的衣装は、正しく中国人のものだと確信しました。中国女性の顔や姿かたち、立ち居振る舞いのみが、このチャイナドレスを自然に着こなさせるものなのでしょう。日本人には決定的に着ものが似合うことと同じですね。『2046』で西洋の服を着させられていたフェイ・ウォンを見て、日本人と同じく西洋人の服は似合わない、ということを改めて感じました。(こういうこと言うと嫌われますね)それと今度もどういう話だったかもう全然思い出せません。ただトニー・レオンチャン・ツィイーを振ってしまうところだけは納得いかない。この絶世のチャイナドレス美人を振るような男は世の中に存在しえないもんね。ついでながらこの映画、確かキムタクも出ていたらしい?(さらに嫌われそう)。というわけで服飾関係の方ならすでに誰でも知ってる映画なのでしょうけれど、これはファッション必見映画としてオススメです。