小村雪岱の浴衣

osamuharada2007-06-19

この間、当ブログをご覧くださった小村雪岱の遠縁にあたる方から、雪岱没後のお香典返しに配られたという、雪岱デザインの浴衣をいただきました。有難く頂戴して、感激いたしました。包みを開けると、なんとも爽やかな藍染浴衣で、やはり雪岱独自のモダニズムを感じさせる平面デザインです。ご遺族からこれは「突っかけ侍」(子母沢寛著)の挿絵からの転用であると聞かされていたらしいのですが確認はできなかった由。図柄は橋の上に立ち、手拭をほっかぶりした着流しの男です。腕は「弥蔵」に組んでいます。切られ与三郎が玄治店の外で待っている場面のようなポーズで、何かワケ有りといった風情。しかしここではもちろん惚れた女を待っている姿としてみたい。これは勝手なぼくの思い込み。橋の下には、川の流れに見立てた縦縞が並ぶというところが、ほんとの「粋」というものですね。物語性と抽象性が共存する、これぞ小村雪岱のデザインです。
最近は著名?な装丁デザイナーが、雪岱の挿絵を(著作権は切れているので)勝手に使用して、文庫のカバーなどに利用していますが、そもそも雪岱の挿絵は独自のデザイン性(特に構図のとり方)と一体になって生じたものなので、デザインだけを別の人がやると失敗します。少なくとも雪岱の良さは半減します。せこいオフセット印刷の色彩などで再現するのも見苦しいよな。雪岱独自の色感は他に真似ができないからです。などと断定的に言っちゃってスイマセン。今年は小村雪岱生誕120年、そろそろどこかで正しく雪岱を再評価して欲しいなと思ってます。